月

「潮汐ロック」という言葉聞いたことありませんか?

地球と月の関係のように、常に月の表を地球に向けて裏側は見せる事が無い現象の事を言いますが、早い話、自転周期と公転周期が一致しているために、まるで紐で結ばれているように感じてしまう天体です。

自転周期と公転周期が一致することがいかにも偶然起こったと勘違いしてしまいがちですが、この現象は何も月だけではないんです。

宇宙にはこうした潮汐ロックがかかっている天体はいくつもあるんですよ。

今回は潮汐ロックがどうして起こるのか、太陽系や宇宙に潮汐ロックがかかっている天体について注目してみます。

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潮汐ロックは二つの天体の距離が比較的近いと起こる

潮汐ロック

潮汐ロックとは二つの天体が公転しているときに、お互いの重力により公転周期と自転周期が同期して、いつも同一面しか見せることができなくなってしまった状態のことをいいます。

二つの天体の公転周期と自転周期がズレている場合には、重力により歪んだ天体にブレーキがかかり公転周期が減速されていきます。

こうした力は天体の質量が大きいほど、また距離が近いほど顕著になるので、天体の大きさによりまちまちです。

潮汐ロックの身近な例として多くの人が認識しているのが地球と月の関係です。

いつも表側しか見せない月は地球の重力により潮汐ロックがかかっている状態ですが、月は直径にして地球の4分の一と比較的大きなもので、地球も月の引力により「潮の満ち引き」という現象を引き起こしています。

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太陽系の惑星に近い衛星は潮汐ロックがかかっている

太陽系の惑星が従えている衛星にも潮汐ロックがかかっているとされています。

その特徴というのが主星に近いということ。

各惑星の代表的な衛星の公転周期と自転周期を確認してみます。

参考のために潮汐ロックがかかっていない衛星も赤文字で載せておきます。

衛星 公転半径(km) 公転周期(日) 自転周期(日) 主天体
384,400 27.322 27.322 地球
フォボス 9,376 0.3189 0.3189 火星
ダイモス 23,458 1.2624 1.2624 火星
イオ 421,700 1.769 1.769 木星
エウロパ 671,100 3.551 3.551 木星
ガニメデ 1,070,400 7.155 7.155 木星
ヒマリア 11,460,000 250.56 0.324 木星
ミマス 185,539 0.942 0.942 土星
エンケラドゥス 238,042 1.37 1.37 土星
タイタン 1,221,865 15.95 15.95 土星
フェーベ 12,947,918 548.02 0.38640 土星
アリエル 190,900 2.520 2.520 天王星
チタニア 436,300 8.706 8.706 天王星
オベロン 583,500 13.46 13.46 天王星
キャリバン 7,231,000 579.73 0.11 天王星
トリトン 354,759 5.877 5.877 海王星
ネレイド 5,513,787 360.1362 0.48 海王星

ご覧のように赤文字以外は公転周期と自転周期が全て同じ数値となっており、これで潮汐ロックがかかっているのが分かります。

一覧表に載せていない衛星は小さすぎて自転周期を実測できないこともあり、潮汐ロックがかかっているのか判断できませんが、主星から一定の距離を越える衛星は潮汐ロックがかかっていないと思われます。

たとえば木星では第6衛星である「ヒマリア」は公転半径が11,460,000kmもあるため潮汐ロックはかかっていません。

木星の衛星データを調べてみたところ、「ヒマリア」より外側を公転している衛星は潮汐ロックがかかっていないものと考えられ、土星、天王星、海王星、冥王星に関しても主星から一定以上距離が離れている衛星は潮汐ロックがかかっていないと考えられます。

水星金星は衛星を持っていないので載せていませんが、水星、金星自身の自転速度(水星が56日、金星が243日)が遅いのは、太陽の引力により徐々に減速していると考えられ、遠い将来に公転周期と自転周期が同期して潮汐ロックがかかるものと考えられています。

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お互いに潮汐ロックがかかっている天体もある

また、一覧表には載せていませんが、主星と衛星の両方に潮汐ロックがかかっている場合があります。

身近なところでは冥王星とカロンです。

冥王星とカロン
冥王星とカロン  出典:NASA

冥王星は惑星ではなく準惑星とされていますが、従えている衛星のカロンが衛星にしては主星である冥王星の半分強もある大きなもので、冥王星を中心に公転しているというよりもお互いの共通重心を公転しているため冥王星自身がふらついている状態です。

そのためお互いの潮汐力により自転が制限されてお互い同一面を向けたまま公転しています。

地球と月の関係もいずれはお互いの潮汐力により自転速度が遅くなり、現在月だけがかかっている潮汐ロックもやがては地球にもかかるものと考えられています。

こうしたお互いに潮汐ロックがかかっているのは惑星と衛星の間だけでなく、恒星同士(連星)の間でも多くが潮汐ロックがかかっているものと考えられています。

動画で分かりやすく解説:BBC 神秘の大宇宙 DVD全9巻

太陽系外惑星でも潮汐ロックがかかっていることがある

近年太陽系外惑星が数多く発見されていますが、主星が太陽よりも小さな赤色矮星である場合が多く、そのためハビタブルゾーンが赤色矮星に近い位置となるため潮汐ロックがかかっている可能性が高いのだそうです。

太陽系から4.2光年という近距離に発見された太陽系外惑星の「プロキシマb」も赤色矮星の周りを公転している惑星ということで、赤色矮星の質量からしてかなり近い位置を公転しており、そのために潮汐ロックがかかっているものと考えられています。

詳しい解説はこちら:プロキシマ・ケンタウリは人類が移住出来る惑星?

潮汐ロックがかかっているのなら自転という認識はおかしいのでは

それにしてもいつも思うことが、月は公転周期と自転周期が一致しているから表しか見せないという表現です。

言わずと知れたことですが、「自転」というのは「自ら回転する」ということ。

潮汐ロックがかかっている状態を自ら回転していると言えるでしょうか?

私には月はハンマー投げに使われる鎖で繋がれた鉄球のようなイメージなんですよね。

いくら振り回しても同一面しか見えません。

このときの鉄球って自転しているというのでしょうか・・・

どうでもいいことですが・・・