タイタン
土星の衛星タイタン 出典:NASA

土星の衛星「タイタン」探査へ向けてのプロジェクトが話題になっています。

2019年6月27日NASAにより発表されたもので、タイタンに生命体の痕跡を探る計画だそうです。

その名も「ドラゴンフライ」

日本語で「トンボ」を意味する理由は後ほど説明するとして、ドラゴンフライは土星の衛星タイタンに降り立ち、移動を繰り返しながら様々な映像やデータを収集する予定だとか。

予定は順調に行けば2034年にタイタンに到着するそうです。

もし実現すれば着陸して移動できる探査機としては月以外の衛星に降り立つ第一号となります。

いったいタイタンのどんな姿を見せてくれるのか・・・

発表されたばかりで情報不足ですが、ドラゴンフライがタイタンに降り立つ計画についてわかる範囲でご紹介させていただきます。

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ドラゴンフライで探査するタイタンの基礎データ

ここで改めてタイタンの基礎データを見ていきましょう。

比較のために地球、月、火星のデータを載せておきます。

天体名 直径
(km)
自転周期
(日)
公転周期
(日)
表面重力
(m/s²)
地球 12,742 1 365 9.807
火星 6,779 1.03 687 3.711
3,474.2 27 27 1.62
タイタン 5,149.5 16 16 1.352

タイタンは土星の第六惑星で最大の衛星、太陽系の衛星では木星のガリレオ衛星「ガニメデ」に次いで2番目に大きな衛星です。

タイタンの直径は月と火星の中間くらいの大きさで、濃密な大気も存在することも確認されています。

また自転周期と公転周期が同一であることからタイタンは月と同様、土星に対して同一面しか向けていない潮汐ロックがかかっていることがわかります。

注目はタイタンの表面重力で、月よりも大きいのに表面重力は月よりも小さいことです。

また、タイタンの大気圧は地球の1.5倍、濃度は4倍とされるうえに重力が月よりも小さいこと、これが探査を楽にしているとされています。

ちなみにタイタンの大気は窒素が主成分で、気温はマイナス179℃と極寒で、地表にはメタンやエタンの湖が広がっているそうです。

タイタンの環境は地球の初期の環境とよく似ているそうで、「ドラゴンフライ」の探査によって生命の誕生や進化のデータが得られるかもしれないと期待されています。

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タイタンへの探査機は以前にも投入されたことがある

タイタンへの探査機を送り込むことは、実は2005年1月14日に成功していて実際にタイタンの地表の撮影に成功しています。

その画像がこちら

ホイヘンス・プローブが撮影したタイタンの地表
出典:Wikipedia

この画像は土星探査機「カッシーニ」に搭載されていた「ホイヘンス・プローブ」がタイタンに投入されて軟着陸したときに撮影されたものです。

そのときはパラシュートで着陸させただけで移動手段が無かったため、そのままで撮影は制限されていたみたいで詳しくは観測できなかったようです。

画像を見る限りでは火星とよく似ており、植物らしい映像も見当たらないところを見ると生命体の発見は期待できないかもしれません。

月の土地

タイタンの探査機「ドラゴンフライ」はドローン型

月や火星の探査で使われてきた探査機は車輪を使用して移動することでデータを得てきました。

それが今回のプロジェクトで使用される探査機「ドラゴンフライ」はプロペラで上昇・移動するドローン型です。

そのイメージ動画がこちら


出典:NASA

その飛ぶ姿が異星の空を舞うトンボのような姿から英語名の「ドラゴンフライ」と名づけられたのでしょうね。

大きさはゴルフカートサイズで機体には8つのプロペラが付いているそうです。

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タイタンの濃い大気と軽い重力でドラゴンフライはドローン型に

何故このような形式に決定されたのか・・・

それはタイタンの大気や表面重力といった性質がドローン型にマッチしていたからです。

表面重力は地球7分の一と月よりも小さいのに大気圧は1.5気圧、密度は地球の4倍と濃密なため、プロペラで移動するのが容易と判断されたのだそう。

またこれまでの車輪で移動する探査機と比較して上空を飛んで移動するため広い範囲でサンプルを採取できるのだとか。

ちなみに火星の全ての探査での合計距離の2倍も移動できるとされ、予想では175kmを超えるだろうとされています。

しかも上空を飛ぶことでひょっとしたらタイタン在住の空飛ぶ昆虫トンボも捕獲できるかもしれません(笑)

動画で分かりやすく解説:BBC 神秘の大宇宙 DVD全9巻

タイタンの大気が濃すぎてドラゴンフライは太陽電池が使えない

探査がし易いと思われるタイタンの特徴も探査機の電源供給にいたっては問題点があるようで、それは土星の衛星といった太陽から遠いことや、大気が濃すぎて太陽光が遮られてしまうため太陽電池では電力が賄えないということ。

そこで使用されることになったのが「放射性同位体熱電気転換器(RTG)」と呼ばれる電源です。

放射性物質が崩壊するときに発生する熱を利用して電気を供給するという仕組みのこの装置は、土星探査機「カッシーニ」にも搭載された実績もあるんだとか。

放射性同位体熱電気転換器を搭載したドローン型の「ドラゴンフライ」といった画期的な探査機をタイタンに送り込む意義はやはり地球外生命体の発見が主な目的でしょう。

太陽系の衛星で唯一、1.5気圧で地球の4倍もの密度といった、完全に発達した大気圏を持っているとされるタイタンが生命体を育む環境にあるのか・・・

15年後に注目です。