以前から生命体が存在するのでは注目されていた木星の衛星「エウロパ」に、さらにその可能性が高まる発見があったようです。
それがエウロパに「塩」の存在が確認されたということ。
エウロパには地下に海が存在するかもしれないとの観測結果が報告され、表面に塩が見つかったということは地下の海も塩分が大量に含まれている可能性もあるわけです。
地球の海も塩分が含まれ、多くの生命体に溢れていることを考えればエウロパにも生命体がいるのではないかと想像がつきますよね。
今回は木星の衛星エウロパで発見された塩の話題に注目してみます。
エウロパ表面に塩化ナトリウムを発見
塩化ナトリウムが発見されたのがエウロパの表面で、黄色っぽく見える「タラ地域」と呼ばれるエリアということ。
塩化ナトリウムといえば塩の主成分で、海水にも含まれていることはよく知られています。
つまりエウロパの表面は塩が大量に存在しているということ。
その画像がこちら
通常塩化ナトリウムは白い結晶で大量に集めても黄色くなることはありません。
では何故エウロパのタラ地域が黄色っぽいだけで塩と判断したのでしょうか。
解明したのはNASAのジェット推進研究所で、エウロパの環境を再現した装置に塩を投入して可視光を照射したところ、タラ地域のように黄色に変色したのだそうです。
そしてタラ地域の黄色みがかった部分を塩化ナトリウムと断定したのがハッブル宇宙望遠鏡の観測によるものなんだとか。
何故ガリレオではなくハッブルだったのか・・・
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ハッブル宇宙望遠鏡の観測により塩が発見される
木星の衛星探査といえば「ガリレオ」探査機ですが、エウロパに最も近いところまで接近して観測していたはずです。
しかし、ガリレオは塩の発見は出来なかったといいます。
その理由はガリレオには塩化ナトリウムを観測する可視光線を分析できる装置が搭載されていなかったためで、これを可能にしたのがハッブル宇宙望遠鏡による地道な観測だったのだそうです。
ハッブル宇宙望遠鏡によってエウロパの表面を観測して可視光線のスペクトルを分析できたことが、塩化ナトリウムの発見に繋がったといえるようです。
以前から囁かれていたエウロパの塩分
今回エウロパに塩が発見されてニュースになっていますが、以前からエウロパの海水には塩分が含まれているのではないかと考えられていたようで、間接的な証拠はいくつか見つかっていたようです。
2013年の報告によれば、ハワイにある口径10mのケックII望遠鏡によりエウロパを観測したところ、木星を向いていない側に「瀉痢塩(しゃりえん)」と呼ばれるマグネシウムの含水硫酸塩鉱物がスペクトルの分析により判断されたそうです。
今回の塩化ナトリウムの発見もエウロパの観測に携わってきた科学者の間では「やっぱり」と感じていたことでしょう。
木星の衛星エウロパの基礎データ
ここで改めてエウロパの基礎データを見てみましょう。
エウロパは木星の第二衛星で、木星の79個の衛星の中でも地上から初心者向け天体望遠鏡でも確認できるほど大きなガリレオ衛星の一つです。
大きさは地球の月よりも一回り小さく、木星の周りを3.55日という短い周期で公転しています。
エウロパの表面は分厚い氷で覆われ、その下には海が広がっていると考えられています。
木星から近いところを公転しているため、潮汐力により内部が揉まれ、これが熱エネルギーとなり表面の氷に力が加わりひび割れているようになっているとの事。
またエウロパは地球の月と同様、潮汐ロックがかかっており、木星にはいつも同じ面しか向けていません。
詳しい解説はこちら:エウロパは生命体が住める環境なの?
塩化ナトリウムの存在は海水を加熱させる仕組みの存在を示唆
塩化ナトリウムは血液やリンパ液、消化液など殆どの体液に溶け込んでおり、体内で栄養を吸収したり運んだり、血液の流れを担う重要なミネラルの一つで、人間が生きていくうえでは無くてはならない存在です。
地球の海にも塩化ナトリウムは大量に溶け込んでいることからも、生命体の存在を検討するのに塩化ナトリウム存在は重要といいます。
エウロパの表面に塩化ナトリウムが大量に存在しているということは、地下の海に溶け込んだ塩分が海中の熱エネルギーにより表面に噴出しているとも考えられるわけです。
地球の深海ではこんな姿がいくつも観られます。
エウロパの海にもこのような姿が観られるのかもしれません。
またエウロパの海は氷の大地に覆われているため光が届くことは無いことが考えられるといいます。
テレビを観ていると、地球の深海の海底から熱水が噴出している場所に多くの深海魚が群がっているのを観る事があります。
つまりエウロパの海は地球上で言えば深海の環境に似ているのではないかと考えられるわけです。
エウロパ表面のひび割れたような模様も、ここから塩分が噴出しているのかもしれませんね。
エウロパを集中的に探査をするエウロパ・クリッパー
エウロパにこれだけの情報が集められれば探査としては最優先ターゲットとなるのは当然で、2017年、NASAはエウロパに向けて探査機を送り込むことを決定。
それが「エウロパ・クリッパー」
2020年代の打ち上げを予定しており、エウロパに複数回接近して表面のデータを収集する予定とされています。
ただし今回はエウロパに着陸することは無く上空からのデータのみで分析することになるようです。
エウロパ・クリッパーはエウロパに生命に必要な要素が存在するのか探ることが主な目的とされていますが、直接物質を採取できるわけではないようです。
これで地下の構造が解るのかが疑問に思えるかもしれませんが、NASAによれば地下の海の水が表面に染み出ている可能性もあり、それだけでも地下の様子を知る手がかりになるといいます。
またエウロパ・クリッパーには電波により地下の構造を探る機材も搭載予定となっているようで、上手くいけば地下の構造が直接確認できるのではないかと期待されています。
エウロパ・クリッパーは来年にも打ち上げ予定ということで、初の地球外生命体発見に向けて世界の期待を一手に背負って飛び立つ日を待っています。