宇宙には無数の恒星が存在していますが、その一つ一つの明るさや色など違った姿に魅了されることってありますよね。
そんな恒星が実は半数以上が連星となっていることをご存知ですか?
私たちが日頃目にする太陽も恒星の一つですが、今のとところ連星ではなく単独で存在しているとされています。
つまり太陽のように単独で存在している方が少ないのです。
太陽は単独で存在しているからこそ8つの惑星が規則正しく公転し、地球のような多くの生命を育む惑星が誕生したのかもしれません。
では連星はどのような生涯を過ごすことになるのでしょうか・・・
そこで連星について調べてみたのでご紹介します。
連星とは互いの重力による軌道運動する天体
観測で2つ重なって見える恒星でも、前後に位置しているだけで重なって見えるものと、実際にお互いが近距離にあって共通重心を公転しあっている天体があります。
連星とはで共通重心、つまり互いの重力で軌道運動している天体のことをいい、恒星の数も3個、4個連なって公転している連星も多く存在します。
基本的には明るい方が「主星」、暗い方が「伴星」と呼ばれており、3つ以上が連なる連星は恒星の数(n個)をとって「n連星」または「n重連星」と呼んでいます。
お互いの質量の差により動きは違ってきますが、たとえば質量が同じ連星の場合はこんな感じで公転しあっています。
これがお互いの質量に差があるとどうなるでしょうか。
面白い動画を見つけたのでご紹介します。
このイメージCGは太陽の20倍の質量の主星と15倍の質量を持つ伴星が連星となっている場合のシミュレーションです。
一方の恒星からガスを吸い取ったり超新星爆発を起こしたり、最後には中性子星を残すといった波乱に富んだ連星の生涯が描かれています。
こうした連星は特に珍しいものではなく、太陽から30光年以内で限定した場合でも254個の内、半数が連星となっていることが確認されています。
SF宇宙アニメでよく知られている宇宙戦艦ヤマトで登場する「イスカンダル」と「ガミラス」も連星という設定です。
アニメにも登場するくらいですから連星という天体はありふれた存在ということですね。
また最も多い数の恒星が公転している連星は7個の恒星が連なる7重連星が確認されており、複雑な動きをしているものと思われます。
実際に観測可能な連星の一例
連星として有名どころでは、おおぐま座の「ミザール」で明るい恒星なので視力さえ良ければ肉眼でも連星として観測することが出来ます。
この画像は2月の20:00頃ですが、北斗七星の柄の先端から2番目の恒星がミザールです。
ちなみに前後に位置して重なって見える天体を「重星」と呼んでいますが、重星はお互いの重力に関わりの無い恒星ということになります。
重星の有名どころでは「アルビレオ」が初心者向け天体望遠鏡でハッキリと確認できます。
(アルビレオは連星なのか、重星なのかは今のところハッキリしていない)
アルビレオの位置はこちら
白鳥座の頭の部分がアルビレオです。
この画像は7月の20:00頃ですが、ちょうど頭の真上近くに位置しているはずです。
私も一度だけアルビレオを観たことがありますが、結構綺麗に見えますよ。
動画で分かりやすく解説:BBC 神秘の大宇宙 DVD全9巻
連星は観測手法において4つのタイプに分類される
連星はどのような手法で判断されるのか、現在の観測技術において4つのタイプに分類されます。
それぞれの概要と特徴をまとめてみました。
1.実視連星
連星は多くの場合望遠鏡などの光学機器を通して観測され、両方の恒星が互いに共通重心の周りを公転していることを確認されています。
このような連星を実視連星と呼んでいます。
ただし連星の多くは公転周期が数百年から数千年といった長い時間がかかるため、連星がどのような軌道を描いているのかは不明な点が多いといいます。
2.分光連星
望遠鏡を使用しても連星としての恒星同士が接近しすぎて分離が出来ない場合に、スペクトルの特徴が周期的に変化することによる分析で連星として確認される方法です。
3.食連星
恒星の前面を伴星が横切ることで「食」が起こり光度が周期的に変わる連星のことをいいます。
4.位置天文的連星
一見何も無い空間を公転している恒星のことをいいます。
つまり伴星が見えないということであり、たとえば中性子星やブラックホールのような可視光を放出しない天体だったりする場合位置天文的連星ということになります。
このように伴星が見えない場合でも主星の運動により伴星の質量は算出できるといいます。
連星の例
ここで北半球で確認できる連星の一例を挙げておきます。
2連星
おおいぬ座のシリウス
こいぬ座のプロキオン
3連星
こぐま座のポラリス(北極星)
オリオン座のリゲル
ケンタウルス座α星
4連星
わし座のアルタイル
おおぐま座ζ星ミザール
ぎょしゃ座のカペラ
5連星
おとめ座のスピカ
6連星
ふたご座のカストル
どれもよく知られた恒星ばかりで、天文ファンであれば誰もが簡単に確認できると思います。
連星系には惑星が存在できない?
複数の恒星が共通重心を公転するという複雑な動きをする場合、太陽系のような惑星が規則正しく公転している状態と比較すれば、連星は惑星を従えることが出来ないと感じますよね。
しかし3つの恒星が公転している連星でも惑星を従えている実例があります。
それがプロキシマ・ケンタウリを公転する惑星「プロキシマb」です。
プロキシマ・ケンタウリは赤色矮星で、ケンタウリα星Aとケンタウリα星Bの連星の周りを公転する天体です。
詳しい解説はこちら:プロキシマ・ケンタウリは人類が移住出来る惑星?
このように3つの恒星が連なる連星でも地球型惑星をいくつも従えている例があるので、連星系だからといって惑星を従えることができないというのは誤りです。
ただ、連星となると惑星に供給される熱エネルギーも安定しないと考えられることから、人類のような知的生命体の存在は期待できないのかも知れません。
連星のまとめ
いかがでしたか。
連星の概要を簡単にまとめて見ましたが、おおよそどのようになっているのかお分かりいただけたと思います。
調べてみて初めて分かったことですが、連星って恒星が互いの共通重心を公転しあったり、まるで太陽系の惑星と衛星のような姿であったり、中には一個が超新星爆発を起こしたりガスを吸い取ったりするなど、何とも落ち着かない形態をとっています。
我々の太陽も過去は連星だったと主張する科学者もいて、仮にそうだとすれば数億年前の太陽系も意外と混乱していたのかもしれません。