近々超新星爆発が起こるかもしれないと話題になってから数年が経つのに、一向に爆発する気配が無いベテルギウス
ベテルギウスが爆発すれば明るさは満月くらいになって昼間でも観ることができると期待されており、現代人の誰も見た事が無い世紀の天体ショーとなると予想されています。
ところが、ベテルギウスの質量からして超新星爆発を起こす可能性が高いとされていますが、実は超新星爆発を起こさない可能性もあるそうで・・・
今回はベテルギウスが超新星爆発を起こさない可能性について注目してみました。
ベテルギウスの基本データ
ここで改めてベテルギウスについてどのような特徴のある恒星なのかを見ていきましょう。
ベテルギウスはオリオン座のα星で、明るさは0.42等級、オリオンの右肩に位置するところに輝いています。
こいぬ座のプロキオン、おおいぬ座のシリウスで形作られる「冬の大三角」は有名です。
地球からベテルギウスまでの距離は約640光年と、直径が10万光年の天の川銀河のレベルで言えばお隣さんという近さです。
すでに危険領域に入ったベテルギウス
ベテルギウスはすでに球形を保てない状態になっていることが、アルマ望遠鏡により地上からの観測で確認されており、歪な姿が印象的です。
一部が飛び出た歪な状態になっていることが確認できます。
さらにNASAのHPに掲載されていた画像がこちら
こちらも表面がボコボコになったベテルギウスが印象的です。
これらの画像を見る限りではベテルギウスが相当不安定になっていて、今にも爆発しそうな雰囲気が漂いますよね。
超新星爆発起こす分疑点は太陽質量の8倍
恒星が超新星爆発を起こすにはそれ相応の質量が必要であり、一つの基準とされているのが太陽の8倍以上とされています。
そもそも恒星が球状を保っているのは核融合による膨張しようとするエネルギーと、自らの重力で中心部に向かって縮もうとするエネルギーのバランスによるもので、このバランスが保てなくなるのが恒星としての寿命ということになります。
こうして太陽の8倍以上の質量を持つ恒星が寿命を迎える際に超新星爆発が起きるわけですが、太陽の8倍以下の質量を持った恒星の最後はというと、周辺にガスを撒き散らしながら縮んでいき中心核がむき出しになった「白色矮星」となります。
私たちの太陽も最後には白色矮星となるだろうと予想されています。
ではベテルギウスはどのくらいの質量を持っているのでしょうか・・・
ベテルギウスは超新星爆発を起こす条件を満たしている
ベテルギウスは太陽の20倍もの質量を持つ恒星で、いわば大質量の恒星の部類に入り、超新星爆発を起こすには十分すぎる質量を持っています。
そして超新星爆発後には中性子星が残されるだろうと考えられ、爆発の際に放出されるガンマ線により周辺50光年以内の惑星は壊滅状態になるとされています。
また1千光年離れていてもベテルギウスの自転軸を中心に2度の範囲は危険とされていますが、幸いにも20度ずれている地球への影響は無いとされています。
もはやベテルギウスは超新星爆発を起こすことは規定路線となっているようで、爆発しないといった意見は皆無です。
しかし次のような超新星爆発を起こさないといった報告もあり、爆発しないという可能性も否定できないのです。
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大質量の恒星の10~30%は超新星爆発を起こさない
これまで大質量の恒星は最後に超新星爆発を起こして中性子星、あるいはブラックホールになるとされていましたが、ある観測結果により超新星爆発を起こすことなくそのままブラックホールになってしまったという事例が出てきました。
それがケフェウス座にある渦巻銀河「NGC6946」内にある一つの恒星「N6946-BH1」です。
地球から2200万光年離れたこの恒星は太陽質量の25倍という大質量恒星で、超新星爆発を起こす条件を十分に満たしています。
この恒星を6年間にわたって観測を続けたところ超新星爆発を起こすことなく消えてしまったといいます。
あらゆることを想定したとしてもこの結果は覆ることなく、結局超新星爆発を起こすことなくブラックホールになったと結論付けられました。
この結果大質量の恒星のうち10~30%は超新星爆発を起こすことなくブラックホールになった可能性があるとされているのです。
こうした研究結果を考えればベテルギウスも超新星爆発を起こさない可能性もあるわけで、これまで超新星爆発を起こすことが前提となっていた様々な報告も見直す必要があるのかもしれません。
ただ、超新星爆発を起こさない例というのはブラックホールが残されると考えられる大質量の恒星ばかりです。
ベテルギウスのような太陽質量の20倍で中性子星を残す恒星が超新星爆発しない事例は観測されていないようで、根本的なメカニズムが違うのかもしれませんね。