無人探査機により実態が解明されつつあるカイパーベルト。
カイパーベルトには多くの微天体が集団で黄道面付近を周回しており、時として軌道を変えて太陽系内部に落ちてくる彗星の故郷とも言われています。
天文に興味のある方なら「カイパーベルト」の名前くらいは知っているかもしれませんが、学べば学ぶほど実態は複雑で、実は私も殆ど分かっていません。
そこで今回カイパーベルトについて調べてみたので理解できる範囲でご紹介したいと思います。
カイパーベルトの概要
海王星より外側の太陽系外縁天体で、太陽から30~48天文単位に無数の小天体が周回している領域のことを、「エッジワース・カイパーベルト」、あるいは単に「カイパーベルト」と呼び、そこにある天体のことをカイパーベルト天体と呼んでいます。
またカイパーベルトより外側には「散乱円盤天体」「オールトの雲」といった領域があります。
カイパーベルトの中でも海王星の重力に影響を受ける「軌道共鳴」を起こしているグループとそうでないグループ(キュビワノ族)に分けられます。
ちなみ冥王星は海王星と「軌道共鳴」を起こしているグループ(冥王星族)に属します。
軌道共鳴とは、天体力学において二つの天体がお互いの重力により影響を受けて公転周期が整数比になる現象のことで、たとえば海王星の公転周期が約165年に対して、冥王星の公転周期は約248年ですから、計算すると2:3という整数比となるので冥王星は冥王星族ということになり、他には準惑星候補として検討されている「イクシオン」や「オルクス」などが冥王星族に含まれます。
キュビワノ族は海王星と軌道共鳴していない天体グループのことで、最初に発見された天体「アルビオン」の当時の仮符号が「1992QB1」だったために「キュー・ビー・ワン」と読めることからキュビワノ族と呼ばれるようになったそうです。
キュビワノ族に属する天体は、準惑星の「ハウメア」「マケマケ」や準惑星候補に検討中の「ヴァルナ」や「クワオアー」、2019年1月に探査機「ニューホライズンズ」が捉えたウルティマトゥーレなどが含まれます。
このような小天体の群集は火星と木星軌道の間を公転している「小惑星帯」(メインベルト)も同じで、太陽系にはこうした小天体が群れを成して公転しているベルトが2本存在することになります。
散乱円盤天体は、海王星の引力により軌道が大きく変化してカイパーベルトの外まで弾き飛ばされてしまった天体のグループのことで、カイパーベルト天体には含まれないこともあり、ここには準惑星の「エリス」が含まれます。
カイパーベルトが発見された経緯
カイパーベルトは1950年、太陽系の外縁部天体である海王星や冥王星より外側に小天体の群れみたいな平たい領域があるとの考え方を示したことに始まります。
しかしこの考え方は長い間注目されることは無く、80年代になってやっと短周期彗星の起源がカイパーベルトとして考えられる領域を説明できることから注目されることになったといいます。
さらに研究が進むにつれてカイパーベルトは彗星の供給源だけではなく、意外な天体を作り出してきた形跡があると考えられています。
それが海王星の衛星である「トリトン」です。
トリトンは海王星の最も外側を公転する衛星ですが、回転方向が他の衛星とは違って逆回転になっており、太陽系形成時から存在していたとは考え難く、これこそカイパーベルトから捕獲されたと考えられているのです。
また、探査機「ニューホライズンズ」の探査により冥王星やウルティマトゥーレといったカイパーベルト天体のアップ画像を地球に送ってきたのが話題になりました。
これまでは仮説の域を出なかったカイパーベル天体も存在が確実になったといえます。
ここまでくればまだ仮説である「オールトの雲」も実際に存在するのではないかと誰もが感じているのではないでしょうか。
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冥王星もカイパーベルト天体だった
2006年惑星だった冥王星が、太陽系の惑星定義から外れるとのことで「準惑星」に格下げされたのが話題になりましたが、実は冥王星もカイパーベルト天体だったと判断されていたのです。
太陽系の惑星定義といえば次のような文言が記されています。
分かりやすく大まかに言えば
1.太陽を中心にその周りを公転している。
2.十分大きな質量を持ち、自らの重力により球形を保っている。
3.軌道上に衛星以外の天体が存在しない。
となっています。
冥王星が準惑星に格下げされたのは3の衛星以外の天体が存在しないことという条件を満たさなかったからです。
というのもそれまで冥王星しか観測できなかったのが、観測機器や技術が発達したことにより軌道付近に似たような天体が複数発見されたからです。
しかも冥王星よりも大きな天体が見つかり、これらが全てカイパーベルトに属する天体として認識されています。
カイパーベルトは短周期彗星の故郷
彗星には短周期彗星と長周期彗星がありますが、短周期彗星の軌道は黄道面とほぼ一致しており、計算すると行き着くのはカイパーベルトあたりであることからカイパーベルトが彗星の故郷と言われる所以です。
ハレー彗星は76年という周期で太陽に接近することが分かっていますが、これも短周期彗星で、元はといえばカイパーベルト天体として太陽系の外縁部を公転していたと考えられます。
今存在が噂されているプラネット・ナインが、カイパーベルト天体を揺さぶり地球に接近してくる彗星が増え、その中の一つが地球と衝突して大災害を被ることになれば人類の危機がやってくることもあるかもしれません。
SFアニメ宇宙戦艦ヤマトでは、ガミラスが冥王星を基点に優勢爆弾を地球に打ち込み人類を絶滅寸前にしましたが、ある意味カイパーベルトには私たちが思いもよらない物体が潜んでいるのかもしれません。
今後の観測に要注目です。