宇宙に興味の無い人でも一度は耳にした事のある天体として「ハレー彗星」がありますよね。
夜空に突然現れてほうきのような姿をした彗星はとても幻想的な姿に思わず見入ってしまいます。
私が初めて彗星を見たのは1976年3月大彗星となった「ウェスト彗星」でした。
明け方の東の空に煙のようなガスがまるでほうきのように噴出した姿は今でも目に焼きついています。
今でこそ美しい彗星の姿も、まだあまり正体が知られていない時代には不吉な兆候として恐れられていたようで、時として大混乱を招いたことをご存知でしょうか?
よく語られるのが、ハレー彗星で大接近したときに彗星の尾の中に地球が突入して、人類が絶滅すると大騒ぎになったという話です。
詳しい解説はこちら:彗星の大接近で自転車のゴムチューブが売れたってホント?
そんな私たちを魅了する彗星とはどんな天体なのでしょうか。
彗星の基本情報
まずは彗星の基本的な情報から見ていきましょう。
彗星は、惑星と準惑星を除くすべての天体、所謂、小惑星、惑星間塵と同様「小天体」の部類に入り、氷や塵で出来てできています。
大きさは数km~数十kmと、とても小さな天体ですが、太陽に接近すると本体の氷が溶けて蒸発し、ガスと塵が一緒に噴出します。
このガスやチリがまるでほうきのように広がるさまから「ほうき星」とも呼ばれることがあります。
その長さは彗星の規模にもよりますが、大きなものでは、たとえば2013年に接近したパンスターズ彗星は800万Kmと物凄い長さを記録した事例もあります。
彗星は多くが太陽に近づき、その後遠ざかるような楕円軌道をとっており、周期的に回帰します。
太陽に近づく過程で火星と木星の軌道の中間あたりから尾を引くことが多く、太陽に接近するにつれて尾は長く伸びるようになるとともに明るく輝いて見えるようになります。
太陽に接近する前の彗星は、それまでは小惑星と見間違うことも多く、逆に小惑星だったものが突然ガスを噴出し彗星と判明した事例もあります。
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公転周期は3年で戻ってくる彗星もあれば70年もかかる彗星もあります。
中には遠ざかったきり戻ってこない彗星もあるとされています。
あの有名なハレー彗星は約76年という周期で地球に接近しています。
彗星のふるさとは2つ
彗星は何処からやってくるのかというと、未だ解明されていませんが、おそらく「オールトの雲」と「エッジワース・カイパーベルト」と考えられています。
海王星の外側にある領域がエッジワース・カイパーベルト、球殻状に氷や塵で包まれたような状態になっているのがオールトの雲です。
オールトの雲は「彗星の巣」とも呼ばれ、太陽から1光年も先にあるとされ、質量にして地球の100倍以上、数百万個以上もの天体が公転していると考えられています。
二度と戻ってこない彗星がある
彗星には、周期的に太陽に接近してくる彗星を「周期彗星」、一度太陽に接近したら2度と戻ってこないか数万年もかかる彗星を「非周期彗星」と呼んでいます。
また、周期彗星も公転周期により分けられ、周期が200年以下の彗星を「短周期彗星」、それ以外を「長周期彗星」と呼んでいます。
ハレー彗星は周期が76年ですから短周期彗星に該当し、エッジワース・カイパーベルトからやってきたと考えられています。
彗星の正体は“汚れた雪だるま”
彗星は氷や塵が固まった所謂“汚れた雪だるま”と表現されることが多く、太陽に近づくことで少しずつ溶解・蒸発し、長い尾となって広がりを見せます。
軌道上には多くの塵を残していくために地球の軌道と交差することになればそれが流星の元となり流星群が現れます。
彗星の構造と2種類の尾
彗星は氷と塵で出来ており、本体のことを「核」と呼び、太陽に接近すると熱により表面が蒸発して核の周りがぼんやりと包まれるようにガスで囲まれているように見え、これを「コマ」と呼んでいます。
そして核からガスと塵が噴出し尾が形成されます。
彗星の尾はその成分から「イオンの尾」と「ダストの尾」の2種類に分けられます。
特徴としては、イオンの尾は太陽とは反対方向にまっすぐ伸び、ダストの尾は太陽の反対方向に伸びることは同じですが、彗星の軌道や塵の大きさによって幅のある尾として形成されます。
彗星は火星と木星の中間軌道あたりから尾が出来始め、地球の軌道あたりで目立って観測されてきます。
彗星は太陽に近づくほど尾は長く明るく輝きますが、彗星本体の規模や成分、地球との位置関係により見え方も変わってきます。
注意しないといけないのは、彗星の予想等級は全体を一点に集中したと想定した明るさになるので、等級を真に受けて実際の彗星をみてがっかりすることがあります。
マイナス一等級だからかなり明るく見えると期待しても、実際はぼんやりとした何かしか見えないかといった感じになります。
流星群の母天体となるのが彗星
毎年数回天体ショートして楽しめるのが流星群ですが、これは彗星の軌道に地球が突入して起こる現象で、それぞれ母天体の彗星も違います。
たとえば「ペルセウス座流星群」の母天体はスイフト・タットル彗星とされています。
彗星が太陽に接近するにつれ、熱と太陽風により彗星本体の氷が蒸発して塵とともに軌道上にばら撒かれ、それが流星群の材料となります。
彗星の軌道が地球の軌道と交差すれば、尾が広がった美しい姿や流星群と、2度楽しめる“美味しい天体”ということですね。