2015年7月に探査機ニューホライズンズが史上初めて冥王星に接近して詳細な画像を地球に送ってきたのは記憶に新しいですが、次に訪れた天体がカイパーベルトに属している「ウルティマ・トゥーレ」。
その画像を始めてみたときには今まで見たことも無い姿に驚愕しましたが、カイパーベルトにはこのような姿をした小天体がゴロゴロと存在しているのかもしれないというイメージが湧いてきたのではないでしょうか。
現在太陽系の惑星の中で最も外側を公転している海王星よりももっと外側に存在していると考えられている領域がカイパーベルト。
カイパーベルトには冥王星をはじめ大小さまざまな小天体が群を成して公転しており、太陽系でも“未開の領域”とされており、ここを観測することで太陽系の成り立ちが分かるかもしれないと注目されています。
今回はウルティマ・トゥーレに注目してみます。
ウルティマ・トゥーレの基礎データ
ウルティマ・トゥーレはハッブル宇宙望遠鏡により2014年6月に発見され、仮符号として「2014 MU69」と名づけられ、後に一般公募によりウルティマ・トゥーレとなりました。
ウルティマ・トゥーレとは、「最果ての地」という意味のようで、果てしなく遠い天体といったイメージが込められているみたいですね。
探査機ニューホライズンズの接近当初に撮影した画像を見ると、まるで雪だるまのような姿に驚かされましたが、その後の観測ではパンケーキのように平ペッタイ姿をしていることが判明したとのこと。
そのイメージ動画がコチラ
太陽から44AU(天文単位)、全長は約33km、幅が約16km、ところどころに窪みが見られ、大きなものでは7km位あるそうです。
公転周期は298年、自転周期は15時間± 1 時間、大きさは面積にして「淡路島」を一回り小さくしたくらいです。
人類が直接探査した天体の最遠記録となり、ニューホライズンズの大きな功績といえます。
画像で見られる赤みを帯びた姿は、構成物質に含まれているメタン等の有機物が宇宙線に含まれる紫外線と反応して生成した「ソリン」と呼ばれる高分子化合物が豊富に存在していることが原因といわれ、ウルティマ・トゥーレはカイパーベルトの天体としては典型的な小惑星といえるとのこと。
どのような経緯を辿ってこのような姿になったのかは不明で、おそらくカイパーベルトに浮遊していた氷の粒がお互い周回していて引力により引き合って合体したのではないかと考えられているようです。
そのイメージイラストがコチラ
このような合体したような形状をしている天体のことを「接触連星」と呼んでいるとのこと。
接触連星は通常構成同士が接触している状態のことを言うようですが、ウルティマ・トゥーレのような小惑星でも言われるんですね。
発見当初は雪だるまと言われてきましたが、実際は大小の鏡餅が通常の縦ではなく横にくっ付いたようなイメージですよね。
事前の観測でウルティマ・トゥーレの形状を把握
今回は探査機ニューホライズンズによる近接撮影で雪だるまのような形状をしている姿を送ってきたことで多くの人を驚かせましたが、実はその前にその奇妙な姿は把握されていたのです。
通常地球から65億kmも離れた天体、しかも縦33km、横15kmといった小さな小惑星の形や色までも特定することは不可能とされてきましたが、ある観測方法によりデータが取得できたといいます。
その観測方法とは、24台の移動式望遠鏡を使って天体が複数の恒星を隠す「隠蔽現象」により、大きさや形状、軌道などに関するデータを取得し分析することで得る方法です。
その画像がコチラ
このデータを元に解析を進めてウルティマ・トゥーレが雪だるまの形状や赤みがかった色をしていることを特定したのです。
もちろんこの段階では二つの物体がくっ付いていることは判断できなかったでしょうが、鉄アレイのような形をしていることは分かっていました。
今回の探査機ニューホライズンズが捉えた映像により形状が一致していることから、隠蔽現象による小惑星のデータ取得の正確性が改めて認識されたというものです。
カイパーベルト天体の観測は太陽系の成り立ちを解明する一つの手段
今回、ウルティマ・トゥーレに接近して捉えられた画像により、それまで地上からの観測では明らかにされなかったカイパーベルト天体の真の姿が次々と明かにされることが期待されています。
太陽系が誕生して46億年経過していると考えられていますが、誕生当初から地球をはじめとした惑星と時を同じくして出来たというのがカイパーベルトと考えられています。
太陽系の最果てに位置するカイパーベルトは最も風化が抑えられていることが考えられ、太陽系の形成解明に大きく役立つと期待されています。