太陽系には8個の惑星の他に小惑星帯(メインベルト)と呼ばれる小惑星が集中している領域がありますが、「はやぶさ2」がサンプルを持ち帰ることに挑戦している「りゅうぐう」も小惑星であることも知られていますよね。
その「りゅうぐう」という小惑星なんですが、太陽系の小惑星帯に属していることでも知られています。
小惑星帯といえば火星と木星の軌道の間を公転していますが、何故、この位置に小惑星が集中しているのかご存知ですか?
今回は小惑星帯が火星と木星の間に位置している要因と現状をご紹介します。
小惑星帯は位置的に惑星になれなかった領域
かつて小惑星帯は、惑星だったものが何らかの理由で粉々に砕け散ったものから出来たと考えられていましたが、今ではそのような考え方は否定されています。
有力な説というのは、太陽系が誕生した当初無数にあった微惑星が現在のような8個の惑星に成長し、惑星へと成長しきれずに取り残された領域が小惑星帯という考え方です。
その軌道が火星と木星の間に集中しているわけですが、大きな影響を受けたのが木星の重力です。
木星は太陽系の総合質量のうち太陽に次いで大きく、それだけ重力も大きくなるため太陽系の天体に様々な影響を与えているとされています。
その木星の巨大な重力が小惑星帯をかき回して惑星へ成長するのを阻んでいるのではないかと考えられているのです。
地球の外側を公転している火星が地球の半分くらいしかないのも木星の重力が影響されたのではないかとの考え方もあります。
このように小惑星帯は原始の太陽系そのままの状態を保っている可能性があり、今回話題になっている「はやぶさ2」が小惑星「りゅうぐう」のサンプルを持ち帰ることが使命といわれるのは太陽系の成り立ちを探る上でとても重要なことと考えられているわけです。
小惑星帯は意外とスカスカ
小惑星帯には非常に多くの小惑星が周回しており、数にして数十万個が確認され、推定でも数百万個もあると考えられています。
大きさも大小様々で直径が100kmを超える天体が220個、小惑星帯で最も大きな「ケレス」にいたっては直径が1000kmもあります。
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お互いが頻繁に衝突しているようなイメージがありますが、以外と密度が低くてスカスカの状態であるといいます。
というのも、小惑星を全て足しても月の1/35ほどの質量しかないとされているからです。
小惑星同士の距離も数万km~数十万kmも離れているとされ、探査機が小惑星帯の中を通過しても衝突する心配も必要が無いほどというか、逆に衝突させる方が難しいそうです。
全ての小惑星が小惑星帯にあるわけではない
上のイメージ画像を見ると、全ての小惑星が小惑星帯にあるのではなく、木星の軌道上にも散らばっているのが分かります。
位置にして太陽からみて前方に60度、後方に60度で、この領域は「ラグランジュ点」と呼ばれ、力学的に非常に安定した領域となり、木星と衝突することは無いとされています。
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この領域に分布する小惑星のことを「トロヤ群」と呼んでいますが、トロヤ群は火星や海王星の軌道上にも存在が確認されています。
小惑星帯は位置により性質が違う
最新の観測によると、小惑星帯にはそれぞれ違う性質があることが分かっており、それは太陽からの距離によって分けられるといいます。
たとえば初代「はやぶさ」が探査した「イトカワ」は、主な材料が岩石のS型小惑星に分類され、今回「はやぶさ2」がサンプル回収に挑んでいる「りゅうぐう」は岩石の中に有機物などが多く含まれるC型小惑星に分類されています。
今回「はやぶさ2」がC型小惑星をターゲットにしたのは、原始太陽系の情報を多く持っていると考えているためです。
小惑星帯の中で太陽に近い領域にはS型小惑星が多く、中央にはC型小惑星、木星に近いほどC型小惑星よりもさらに有機物が豊富なP型小惑星やD型小惑星が分布しており、原始太陽系の情報がより多く含まれていると考えられています。
火星と木星の間が開きすぎている理由
上の画像からも分かると思いますが、火星と木星の間だけがやけに開きすぎていますよね。
これには力学的に法則があって、かつて天文学者が火星と木星の間にまだ惑星が見つかっていないのではないかと考えたそうです。
その法則というのが「チチウス・ボーデの法則」です。
チチウス・ボーデの法則とは、太陽系の惑星はある数列により公転半径が規則正しい間隔を空けているという考え方で、この法則により天王星も発見されたことで注目されたとのこと。
詳しくはコチラの記事をご覧ください:太陽系の天体の特徴・意外な法則があった!
太陽系の8個の惑星の公転半径をご覧ください。
惑星名 | 公転半径(AU) | チチウス・ボーデの法則 |
---|---|---|
水星 | 0.39 | 0.4 |
金星 | 0.72 | 0.7 |
地球 | 1 | 1.0 |
火星 | 1.52 | 1.6 |
小惑星帯 | ー | 2.8 |
木星 | 5.20 | 5.2 |
土星 | 9.55 | 10.0 |
天王星 | 19.22 | 19.6 |
海王星 | 30.11 | 38.8 |
火星と木星の間に小惑星帯を挟んでみましたが、これだとほぼ法則どおりになりますよね。
ここに小惑星帯で最も大きな小惑星「ケレス」を当てはめてみると、ケレスの公転半径は2.77AUですから2.8とほぼ一致します。
この事実から分かるように太陽系の現在の姿は力学的に最も安定した状態となっており、小惑星帯が火星と木星の間にあるのも自然な姿ということになります。
ただし、チチウス・ボーデの法則は今のところ論理的な証明がされておらず、コンピューターシミュレーションが発達した現代ではあまり支持を得られていないようで、実用性には欠けているようです。
小惑星帯の位置関係を説明する上でチチウス・ボーデの法則を活用すると説得力のある解説が出来るような気がするのですが・・・