太陽系の惑星の自転周期はすでに公表されていますが、実は土星の自転周期は不正確であったようで、新たな手法で正しい自転周期が算出されたようです。
そもそも土星は地球のように地表が存在しないために、ガスで覆われた表面は目印が無く正確な自転周期は暫定的なものです。
それがここのところの観測技術の発達で新たな手法が考えられて算出されるようになりました。
それは土星の環を観測することで割り出せるのだそうです。
どうやって割り出したのでしょうか?
ガス惑星の自転周期測定は岩石惑星ほど簡単ではない
惑星の自転周期を割り出すには表面の模様を基準にすれば簡単に測定できますが、これは地球や火星のような岩石惑星に限ってのこと。
というのもガス惑星には地表が無いので目印が指定できないからです。
ご存知のように太陽系の惑星は、大きく分けて地球型惑星と木星型惑星に分かれます。
地球型惑星は、金属と岩石で構成された惑星で、水星、金星、地球、火星がこれに相当します。
木星型惑星は、主に水素とヘリウムをはじめとしたガスで構成された惑星で、木星、土星、天王星、海王星がこれに相当します。
このように土星も含めたガス惑星に限っては地球型惑星のような測定方法では自転周期を求めることが出来ないのです。
そこで考案されたのが磁軸を利用することなんだとか。
ガス惑星は磁軸を利用して自転周期を測定
地球には磁場があることは知られていますが、磁場により形成された磁気圏が地球を大きく取り囲むように存在しています。
地球の自転とともに磁場も自転していますが、その自転軸の両極を結んだ線のことを「磁軸」と呼び、地球本体の自転軸に対して11度傾いています。
土星や木星のようなガス惑星は、強力な磁場により形成された磁気圏が存在しており、それは惑星内部と強く結びついているために一緒になって回転しているとされています。
その磁軸は惑星により自転軸と角度がずれているため、その揺れ具合を測定することで自転周期が算出されています。
木星、天王星、海王星もこの方法で自転周期が割り出されています。
しかし土星だけはこの方法で割り出すことが出来ないのです。
というのも土星本体の自転軸と磁軸の角度がほぼ一致しているからです。
これでは自転周期を割り出せません。
そこで考えられたのが環の動きです。
土星内部の振動が環に現れる
土星の環が氷や岩石で出来ていることはこれまでの探査機による観測で分かりましたが、土星本体の内部の振動が環に伝わり波を打つようになるとのこと。
土星や木星のようのガス惑星は全てがガスで出来ているわけではなく、内部は液体と中心部の岩石を液体の金属が包み込むような構造になっていると考えられています。
その画像がコチラ
そのためなのか理由はハッキリと分かりませんが、土星本体内部では物質の移動により振動が働き、それが地震計のように環に現れるといいます。
その結果土星の自転周期は10時間33分38秒と割り出され、これまで見積もられていたよりも数分速いことが分かったとのこと。
このアイデアを思いついたのが、米・カリフォルニア大学サンタクルーズ校のクリストファー・マンコビッチ氏。
マンコビッチ氏は衛星が環に近づくとその引力によって環に波が立つなら土星内部の物質の移動による振動も同じ現象が起きることに目をつけたのだそうです。
そのデータを得ることが出来たのも、NASAが欧州宇宙機関(ESA)と共同で開発した土星探査機「カッシーニ」の長年にわたる土星の観測があったからです。
カッシーニは1997年に打ち上げられ、最後に2017年に土星の大気圏に突入して運用を終了するまで、土星本体と環の隙間を何度も通過するなど詳しい観測を行ってきました。
その観測で得られた環の動きから土星の自転周期が得られたというのはカッシーニの大きな功績といえるでしょう。
土星の強力な磁場はカッシーニの探査の重要なターゲットだった
そもそもカッシーニは土星の強力な磁場の発生原理や構造は重要な観測要素となっていたようで、磁軸と土星本体の自転軸のズレも観測ターゲットになっていたようです。
にもかかわらず自転周期の算出を環の動きに求めたということは、よほど磁軸と自転軸がピッタリ一致していたのでしょう。
土星探査機カッシーニによる細かな観測が実を結んだというところですね。
それを利用して自転周期を算出するアイデアを思いついたマンコビッチ氏の功績も賞賛されるべきでしょう。