長距離先の標的を狙撃する要員とされるスナイパー
アクション映画でもよく目にしますが、標的にされた方はどこから弾が飛んでくるのかさえわからないところが何とも恐ろしいものです。
そんな恐怖が宇宙空間でも起こりうるということをご存知ですか?
スナイパーが発したレーザービームがもし地球に命中したら人類は絶滅の危機に瀕してしまうこともあるのだとか・・・
それが「ガンマ線バースト」
今回はそんな恐ろしいガンマ線バーストについてのお話です。
過去の大量絶滅はガンマ線バーストが原因?
地球上では過去に5回大量絶滅が起こったとされていますが、その中の一つ、4億4400万年前の「オルドビス紀末の大量絶滅」がガンマ線バーストの直撃を受けて起こされたものとの説があります。
地上の生物はもちろん、海洋生物の70%が死滅したとされるほどその被害は甚大だったようで、もし現在、ガンマ線バーストの直撃を受ければ人類存続の危機に瀕してしまう可能性も否定できないと考えられています。
そもそも宇宙空間には有害な放射線を含む「宇宙線」が飛び交っており、地球にも絶え間なく降り注いでいます。
そんな有害な宇宙線から地球を守っているのがオゾン層と呼ばれるバリアの存在です。
しかし、どこからともなく照射されるガンマ線バーストはオゾン層のバリアを破壊してしまうのです。
バリアを無くした地球には有害な放射線が降り注ぎ、生命体を遺伝子レベルで蝕んで行き、これが大量絶滅への引き金になるというのです。
ガンマ線バーストの発生プロセス
ガンマ線バーストには2通りの発生プロセスがあり、一つは質量の大きな恒星が寿命を迎えて引き起こされる超新星爆発で、もう一つは中性子星の衝突・合体の際にそれぞれ発生します。
またそれぞれガンマ線バーストの性質が異なり、超新星爆発で発生した場合で、照射の継続時間が数分間と長くなり、これを「ロングガンマ線バースト」と呼んでいます。
一方中性子星の衝突・合体の際に発生するガンマ線バーストは、照射時間が2秒にも満たないとされ、これを「ショートガンマ線バースト」と呼んでいます。
詳しい解説はこちら:ガンマ線バーストには2種類ある
どちらにしてもガンマ線バーストは太陽を上回る質量を全てエネルギーに転換した位の膨大な出力をもち、標的が地球に向けられれば、生命体に大きな被害を受けることは避けられないと言われています。
ガンマ線バーストは恒星の自転軸方向が危険
ガンマ線バーストは恒星の自転軸を中心に2度の範囲に向けて照射されると考えられているので、もし地球が2度の範囲に入っているとすれば非常に危険ということになります。
しかも距離が1千光年以内とされるとさらに危険性が増すと考えられています。
近いうちに超新星爆発を起こすのではないかとの予想されているベテルギウスまでの距離は640光年とされ、1千光年以内という条件には合致します。
しかし、ベテルギウスの自転軸の2度の範囲に地球は入っていないのでひとまず安心といえるでしょう。
しかしガンマ線バーストは数千光年先にまで影響を及ぼすと考えられるので、ベテルギウス以外の超新星爆発を起こす可能性のある恒星があれば安心とは行かないでしょう。
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地球から1千光年以内の範囲にガンマ線バーストを起こす可能性のある恒星数
地球から1千光年以内の範囲に恒星は推定7000万個あるといわれ、その中で近いうちに超新星爆発を起こす可能性のある恒星はベテルギウスとアンタレスくらいとされています。
ベテルギウスは自転軸が地球と20度ズレているので心配する必要は無く、アンタレスも今のところ超新星爆発を起こす兆候は無く当面は心配する必要は無いようです。
また、どちらにしても質量的にガンマ線バーストが発生する可能性は低く危険性は無いようです。
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微妙なところで1000光年~1400光年先に超新星爆発を起こす可能性がある恒星がオリオン座イプシロン星(三つ星の中央に位置する)と、とも座ゼータ星くらいですから、今後地球がガンマ線バーストの直撃を受ける可能性は確率的には限りなくゼロに近いといえます。
1千光年以内では、「ほ座ラムダ星」が545光年、「ペガスス座イプシロン星」が690光年と割と近い所にありますが、質量はそれぞれ太陽の9倍と10倍なので超新星爆発を起こすかは微妙なところです。
仮に超新星爆発が起こったとしてもガンマ線バーストが発生するとは考え難く、危険とされる50光年以内でもないため安心してよさそうです。
質量が小さくてもガンマ線バーストを発する可能性がある事例
ガンマ線バーストが発生するのは質量の大きな恒星とされていますが、これにも例外があります。
それは白色矮星が連星の場合、恒星のガスを吸い込んで核融合が再開され超新星爆発を起こすことと、中性子星同士の合体によりブラックホールになるときにガンマ線バーストが放出されることです。
これらのことを総合して地球にガンマ線バーストが直撃する確率は、およそ20億年に一度といわれ、まったくといっていいほど心配する必要は無いといえるでしょう。
フロンガスによるオゾン層の破壊が発見されていなかったら
ガンマ線がオゾン層を破壊するとされていますが、オゾン層の破壊といえば「フロンガス」がよく知られていますよね。
このメカニズムを解明した科学者は、アメリカのF・シャーウッド・ローランド博士で、このまま放置すれば地球の全オゾン層は最終的に7~13パーセント減少していただろうと考えていたようです。
冷蔵庫やエアコンへのフロンガス使用をやめたことでオゾン層の破壊も食い止められつつあるようですが、もしオゾン層の破壊プロセスが解明されていなかったら知らない間に人類が自らガンマ線バーストを浴びたのと同じ事をしていたことになります。
ガンマ線バーストによる被害は小惑星の衝突のような目に見える被害ではなく、DNAを傷つけることでじわりじわりと蝕まれていくといいます。
人類も核戦争の懸念や小惑星の衝突懸念に気をとられているうちに、気がつかないうちに破滅に向かって進んでいたところでした。
こうした環境破壊に関する研究も人類が存続する上で大きく貢献しているんですね。
昨今の地球温暖化の研究も、今後大きな役割を担っていくものと思います。
しかし地球温暖化人為説はどうかと思いますが・・・