夜空を見上げると無数の星が輝いていますよね。
この中には恒星や惑星、星雲など、様々な天体がひしめき合って私たちの目を楽しませてくれます。
私も若いころは晴れていれば毎晩のように天体望遠鏡で夜空を眺めていましたが、土星の環と同様に興味をひかれた天体があります。
それが惑星状星雲です。
私が最初に目にした惑星状星雲がこと座にあるM57のリング状星雲でした。
口径60mmの屈折式天体望遠鏡でもはっきりとリング状の姿が観えたくらいですから当ブログでお勧めしている初心者向け天体望遠鏡なら間違いなく観れるはずです。
当時初めて観た時には感動しましたが、当時は木星や土星ばかりを観測していましたから、惑星状星雲を観た時には不思議な感覚だったのを覚えています。
そこで今回は惑星状星雲に注目してみます。
惑星状星雲は恒星の最終段階の姿
恒星の最後はその質量によって全く違った姿になります。
大きな質量の恒星は超新星や超新星爆発を経てブラックホールになり、それよりやや質量が小さいと中性子星、太陽クラスの質量を持った恒星が惑星状星雲になると考えられています。
ただし、天文学者の間では太陽の最後は惑星状星雲にはならないと考えもあったようですが、観測技術の向上とともに最近になって太陽も惑星状星雲になると結論付けられたようです。
惑星状星雲とはどのような姿なのでしょうか?
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惑星状星雲にもさまざまな姿がある
惑星状星雲は、イギリスの天文学者ウィリアム・ハーシェルにより名付けられたもので、天体望遠鏡で緑ががかった姿が惑星のように観えることから表現されるようになったそうです。
代表格でもあること座のM57をはじめとした惑星状星雲は銀河系内に位置することから割と観測しやすいようです。
ただしM57は初心者向け天体望遠鏡で観測しても白っぽいリングにしか観えませんが・・・
それでも初めて観た時にはとても神秘的な感じになりますよ♪
惑星状星雲は実に様々な姿があり、色合いも独特で画像を見ると本当に美しく癒されます。
それぞれの特徴を見ていきましょう。
見た目の大きさをほかの天体と比較するために代表的な天体を挙げておきます。
天体名 | 視直径 |
太陽 | 30′ |
月 | 29’~33′ |
金星 | 10″ ~ 58″ |
火星 | 4″~16″ |
木星 | 32″~ 49″ |
土星 | 16″ ~20″ |
アンドロメダ銀河 | 190′ × 60′ | M57 | 1′ × 1.4′ |
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こと座の環状星雲M57
M57は惑星状星雲では代表的な天体で、「リング星雲」「ドーナツ星雲」の別名があるくらい、ユニークな姿をしています。
詳細を見てみましょう。
8月のPM7:00~8:00に南を観て、ほぼ真上を観るとこんな感じに見えるはずです。
夏の大三角である、「デネブ」「アルタイル」「ベガ」が観えますね。
○で囲ってあるのがこと座でそれをアップしたのがこれです。
↓↓
下に○で囲った所にこと座の環状星雲M57があります。
初心者向け天体望遠鏡で観測すると、大きさは木星くらいでドーナツ状になっているのがはっきりと判ります。
画像を見ると中心付近に小さな白い点がありますが、これは太陽クラスの質量を持った恒星が最終段階で白色矮星となったものです。
白色矮星を取り囲むようなリングは、恒星が赤色巨星になって白色矮星に縮んでいく段階で放出されたガスで、白色矮星から放たれている紫外線に照らされて輝いています。
ちなみに白色矮星は口径が30cm以上の天体望遠鏡でないと観測することはできないとされています。
【こと座環状星雲M57の基本データ】
地球からの距離は2,300光年、明るさは8.8等級、直径は約2.6光年で年齢は7005歳となっています。
名称 | 所属星座 | 視等級 | 視直径 | 距離(光年) |
環状星雲(M57) | こと座 | 8.8 | 1.4′ x 1.0′ | 2,300 |
こぎつね座の亜鈴状星雲
その姿が筋トレで使われる鉄亜鈴に似ていることから名付けられた惑星状星雲です。
鉄亜鈴はちょっと無理があるような気がしますが・・・どちらかというと銀行のマークに近いかもしれませんね。
見た目はこと座環状星雲M57の5倍くらい大きいことから、複数のアマチュア天ファンの間では非常に人気の高い星雲です。
初心者向け天体望遠鏡でも円形を両端から噛み切ったような姿が確認できるそうですよ。
観測位置ですが、M57と同じく夏の大三角内にはあるんですが、近くに明るい星がないので見つけるのが多少難しいかもしれません。
他の明るい星と間隔的なものをイメージしながら探すようにして見つけるのが簡単かもしれませんね。
【こぎつね座の亜鈴状星雲M27の基本データ】
地球からの距離は1,235光年、明るさは7.4等級、年齢は4000歳とされています。
名称 | 星座 | 視等級 | 視直径 | 距離(光年) |
亜鈴状星雲(M27) | こぎつね座 | 7.4 | 8.0’x5.7′ | 1200 |
おおぐま座のふくろう星雲
丸い星雲の中に暗い部分が2つ並んでいる姿が鳥の「フクロウ」に似ていることから名付けられたもので、惑星状星雲の中では割と大きい部類に入るとされています。
ただ暗いことや、ぼんやりとした模様が初心者向け天体望遠鏡では「フクロウ」のような模様を確認するのは難しいとされているようです。
【おおぐま座のふくろう星雲M97の位置】
観測位置ですが、この図は8月の20:00前後で低い位置になるので、見やすさを考えるとおおぐま座が高い位置になるほかの時間帯か時期的なものを考えたほうがよりきれいに観えると思います。
ちなみに20:00におおぐま座が最も高い位置になるのは3月~4月あたりになります。
【おおぐま座のふくろう星雲M97の基本データ】
名称 | 所属星座 | 視等級 | 視直径 | 距離(光年) |
ふくろう星雲(M97) | おおぐま座 | 9.9 | 3.333′ × 3.333′ | 2,600 |
みずがめ座のらせん星雲
ぱっと見は猫の目のように観えますが、よく見るとらせん上に観えることで名付けられたようです。
視直径が満月の半分と、非常に大きな惑星状星雲ということで双眼鏡の低倍率で観測できるそうです。
ただ大きいといっても暗い部分も含んでのことなのでアンドロメダ銀河のように数値ほど大きく観えないようです。
この画像は10月25日20:00で真南に位置します。
周辺に明るい星がないので位置の特定が難しいですが、上の画像のように「フォーマルアウト」に右斜め上あたりを探してみてください。
淡い光が拡散していることから探しにくいみたいで、空気がきれいで月明かりのない好条件での観測が必要かもしれません。
【みずがめ座のらせん星雲(NGC7293)の基本データ】
名称 | 所属星座 | 視等級 | 視直径 | 距離(光年) |
らせん星雲(NGC7293) | みずがめ座 | 6.5 | 13.524 | 700 |
うみへび座の木星状星雲
1785年、ウィリアム・ハーシェルにより発見され、第一声が「木星にそっくりだ」と述べたことからその名がつけられたとされています。
画像はハッブル宇宙望遠鏡によるもので、これを見る限りでは木星に似ているのかどうか・・・
私には「ミジンコ」に見えてしまいます。
1785年当時の天体望遠鏡の性能を考えれば致し方ないのかもしれませんね。
アルファードを目印に西側に辿って見てください。
大きさは木星クラスだそうですが、星雲の形が円形なので倍率が小さいと恒星にしか見えないそうです。
15cm以上の口径の大きな天体望遠鏡なら星雲の大きさからして倍率を上げてみると模様が見えるかもしれませんね。
【うみへび座の木星状星雲(NGC3242)の基本データ】
名称 | 所属星座 | 視等級 | 視直径 | 距離(光年) |
木星状星雲(NGC3242) | うみへび座 | 10.3 | 40″ × 35″ | 26,000 |
みずがめ座の土星状星雲
星雲の左右に棒のようなものが突き出た姿がまるで土星のように観えることから名付けられたそうです。
ハッブルの画像を見ると内部に複雑な構造が特徴的な惑星状星雲です。
直径は0.5光年
みずがめ座のらせん星雲(NGC7293)と近い位置にあるので、ついでに観測すると判りやすいと思います。
名称 | 所属星座 | 視等級 | 視直径 | 距離(光年) |
土星状星雲(NGC7009) | みずがめ座 | 8.0 | 44”×26” | 2300 |
ふたご座のエスキモー星雲
ハッブルで撮影された姿はひときわ輝くダイヤモンドのように観えますが、地上からの天体望遠鏡では防寒フードを被ったエスキモー人に似ていることからその名が付けられたそうです。
星雲が形成されて1万年となっていて、周辺に広がっているフィラメントが印象的な惑星状星雲です。
20:00となると冬場に観測することになるので防寒はしっかりとしたほうが良いですね。
季節がら空気が澄んでいるのでより美しく観えるかもしれませんよ♪
極寒の中観測することになるので、正に“エスキモー”のような格好をして天体望遠鏡をのぞくことになるかも・・・
名称 | 所属星座 | 視等級 | 視直径 | 距離(光年) |
エスキモー星雲(NGC2392) | ふたご座 | 9.68 | 47″ x 43″ | 1360 |
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アカエイ星雲
これまで確認されている惑星状星雲の中で最も若い星雲だそうです。
位置は南半球でしか見られない「さいだん座」の方向にあるそうです。
さいだん座はさそり座の南にあるので残念ながら日本からの観測は困難のようです。
時間とお金が許される方は南半球に旅行に行ったときに天体望遠鏡を持参して観測してみてはいかがですか。
太陽も最終段階で惑星状星雲になる
いくつかの惑星状星雲をご紹介しましたが、その姿は恒星の性質や環境によって左右されると考えられています。
惑星状星雲になるのは太陽の8倍以下の質量の恒星で、核融合の材料が無くなりつつある最終段階に向けて膨張して赤色巨星となります。
太陽を例にとると、膨張が始まるのが今から17億5千万年後からで、太陽の寿命である44億年前後で地球の軌道あたりまで膨張。
その後質量の8割がガスとして周辺に放出されて惑星状星雲が形成されると考えられています。
ただしどの段階でどのようにガスが放出されるかは専門家の間でも意見が分かれるそうです。
そして惑星状星雲の中心にガスが抜けて萎んだ白色矮星が残ります。
こうした考え方は太陽のように単独で形成される場合であって、恒星によっては2つ、3つの伴星を伴っていたり、個々の自転速度も違うことからどのような姿になるかは専門家でも判断しかねるとのこと。
いずれにしても太陽の最後は基本的に考えればこと座の環状星雲やみずがめ座のらせん星雲ような姿になると考えられています。
また周辺に噴き出たガスも拡散をして、やがて宇宙に消えていくのだそうです。
そして白色矮星も次第に冷えて行き最後には光を発することなく宇宙の闇に消えていくのだそうです。
ちなみに惑星状星雲は宇宙の中でも寿命が短く、せいぜい数万年程度といわれています。
100億年の寿命を誇る太陽も最終的には惑星状星雲としてあっけない最期を辿るのでしょうか・・・