近頃やたら耳にする「スーパーアース」
スーパーアースとは太陽系外惑星で地球の数倍くらいの質量を持つ大きな岩石惑星のことをいいます。
観測技術の発達により次々とスーパーアースが発見されていますが、注目されているのはそこに生命体が居るのかどうかということ。
今回はスーパーアースの発見と生命体の可能性について調べてみたのでご紹介します。
スーパーアースを発見する観測手法
スーパーアースは何光年も先の太陽系外惑星のため非常に観測し辛く、望遠鏡で拡大して直接確認することは出来ません。
ではどのようにして発見できたのかというと、太陽系外惑星の主星である恒星を観測することで間接的に存在を証明します。
そのよく使われている方法というのが、
トランジット法
ドップラー分光法
スーパーアースの発見にはトランジット法が最も使われている
現在スーパーアースの発見によく使われている方法というのがトランジット法です。
トランジット法は恒星の前面を惑星が通過することによりわずかな減光を捉えることで発見できる方法です。
太陽系外惑星の発見には恒星を一個一個観測するような非効率な観測ではなく、複数の恒星をまとめて観測し、光度に変化のあった恒星を詳しく観測することで惑星の存在を確認するという手法を使います。
ただし、惑星が恒星の前面を通過するには惑星の公転軌道が地球に向いていなければならず、ある程度観測できる恒星も限られてしまいます。
また、公転周期が長いと発見し難く、比較的公転周期の短い惑星しか発見されない傾向という欠点もあります。
地球のすぐ近くにスーパーアースがあるかもしれないのに公転面が地球に向いていなかったり公転周期が長いいために発見されていない可能性もあるのです。
それを補うの観測手法がドップラー分光法です。
ドップラー分光法は主星の揺らぎで惑星を発見する
質量の大きな恒星の周りを小さい惑星が公転する場合、公転軌道の中心は主星である恒星の中心ではなく、必ず共通重心を中心に公転します。
そのため恒星は常にふらついていて、それは恒星と惑星の質量の違いにより度合いが違ってきます。
そのふらつき度合いを観測することで惑星の存在を確認するという方法がドップラー分光法です。
ドップラー分光法であれば惑星の公転面が地球に向いている必要はなく、比較的多くのスーパーアースが発見できるとされています。
しかしこの方法にも欠点があり、精度的に問題があるということ。
つまりミスも多いというのです。
かつてドップラー分光法で発見できたとされた太陽系外惑星が実は間違いだったとして撤回されたという経緯があります。
そのため比較的近い恒星が観測対象とされる傾向にあり、地球から160光年以内が限度とされているようです。
ドップラー分光法は質量の小さな恒星が主な観測対象
また質量の大きな恒星はふらつき度合いが小さく検出しにくいという傾向があるため、必然的に質量の小さな恒星の周りを公転する惑星が検出され易いといいます。
ここのところ太陽系外惑星の発見が相次いでいますが、殆どが質量の小さい赤色矮星を主星としています。
ちょっと前に話題になった太陽系外惑星「プロキシマb」の主星がプロキシマ・ケンタウリと呼ばれる赤色矮星であることも知られています。
詳しい解説はこちら:プロキシマ・ケンタウリは人類が移住出来る惑星?
この他に太陽系外惑星の発見方法として「マイクロレンズ法」「パルサータイミング法」などがありますが、あまり聞かないところを見るとトランジット法が最も効率が良いということでしょう。
これまでに発見されたスーパーアース
これまで数千個もの太陽系外惑星が発見されていますが、その中でも多くのスーパーアースが発見されています。
その主なスーパーアースの特徴を見てみましょう。
惑星名 | 距離(光年) | 質量 | 半径 | 公転半径 | 公転周期 | 主星 |
---|---|---|---|---|---|---|
グリーゼ876d | 15.2 | 6.83 | 1.23 – 2.27 | 0.02 | 1.94日 | 赤色矮星 |
OGLE-2005-BLG-390Lb | 21,500 | 5.5 | 1.69 | 2.6 | 10年 | 赤色矮星(予想) |
グリーゼ581c | 20.24 | 5.5 | 2.88 | 0.072 | 12.92日 | 赤色矮星 |
グリーゼ581d | 20.3 | 6.98 | 2.2 | 0.22 | 66.80日 | 赤色矮星 |
グリーゼ581e | 20.3 | 1.94 | 31.7 | 0.03 | 3.15日 | 赤色矮星 |
MOA-2007-BLG-192Lb | 3000 | 1.4 | 1.9 | 0.62 | 799.54日 | 褐色矮星か低質量恒星 |
CoRoT-7b | 501 | 5.74 | 1.59 | 0.017 | 0.85日 | G型主系列星 |
ケプラー22b | 620 | 52.8 | 2.04 | 0.849 | 289.86日 | G型主系列星 |
かに座55番星e | 40.25 | 7.8 | 2.04 | 0.0156 | 17.68時間 | G型主系列星 |
質量、半径、公転半径は全て地球を1として倍数で表示
Wikipediaより一部引用
この一覧を見ると主星に赤色矮星が多く、大きくても太陽クラスのG型主系列星であることが分ります。
それだけ赤色矮星を公転しているスーパーアースの存在が観測機器にヒットし易いものと思われます。
また多くが地球質量の5~7倍といった惑星であり、大きな質量により地球とは違う環境にあるといいます。
スーパーアースの重力
地球の数倍の質量があるスーパーアースだけに重力もそれだけ大きくなります。
質量が大きくても密度が低ければ重力もさほど大きくなることはありません。
つまり同じ質量では半径が小さいほど重力は大きくなります。
あわせて読みたい:月の重力を他の衛星と比較してみて判明したこと
地球は惑星では高密度とされていますが、スーパーアースは傾向として低密度と推測されているため重力に関しては地球とさほど変わらないのではないかと考えられているようです。
スーパーアースは磁場が弱い
惑星に生命体が存在できる一つの条件として磁場の有無があります。
地球には巨大な磁場が存在していますが、磁場は太陽風から大気が剥ぎ取られるのを防いでくれる働きがあるため生命体には無くてはならない存在なのです。
火星にはかつて広大な海が存在していて生命体も居たのではないかと考えられていますが、火星の磁場はほぼ消滅してしまったために太陽風によって大気が剥ぎ取られ海の水も蒸発してしまったと考えられています。
その磁場を作り出しているのがマントル対流ですが、火星の内部は冷えてしまいマントル対流が滞りがちになっているために磁場の殆どが消滅してしまったものと考えられています。
ではスーパーアースの磁場はどのようになっているのでしょうか?
スーパーアースはその大きな質量ゆえに内部の圧力が高くマントル対流の効率が悪く磁場が発生しにくいのではと考えられています。
つまり質量の大きなスーパーアースには生命体の存在は期待薄ということになります。
スーパーアースのハビタブルゾーン
これまで多くのスーパーアースが発見されていますが、ハビタブルゾーンに入っているとされるスーパーアースもあります。
そうなると気になるのが水が液体で存在しているのかということで、生命体が居る条件の一つです。
しかしたとえスーパーアースがハビタブルゾーンに入っていても生命体の存在には厳しい環境があります。
たとえば、主星が質量の大きな恒星にスーパーアースが公転していても、恒星は質量が大きいほど寿命が短いので生命体が進化する前に主星が死んでしまいます。
そう考えると質量の小さい赤色矮星は寿命が数千億年から数兆年と長いために生命体が進化できるには時間的に十分です。
赤色矮星系のハビタブルゾーンは主星に近い
ところが赤色矮星は表面温度が4000度以下と低いためにハビタブルゾーンは主星に近い位置となります。
主星に近いとそのような現象が起こるのかというと、主星のフレアの影響を受けやすいということ。
フレアとは恒星の表面での爆発現象で、惑星に有害な放射線を浴びせることでも知られています。
質量の小さい赤色矮星にもフレアは発生しているようで、生命体の存在には厳しい環境である可能性があると言えます。
そう考えると主星は太陽クラスのG型主系列星が理想的といえるのかもしれません。
赤色矮星系の惑星は潮汐ロックがかかっている
また赤色矮星に近い位置を公転しているために重力により潮汐ロックがかかっている可能性が高いといえます。
潮汐ロックとは月のように片面しか見せない現象で、赤色矮星系のスーパーアースに潮汐ロックがかかれば光が当たる面は灼熱地獄で、光が当たらない反対面は極寒地獄となります。
中間地点であれば大気の流れでマイルドになり生命体の存在も期待できるという意見もありますが、どうでしょうか・・・
太陽のようなG型主系列星が主星であれば、ハビタブルゾーンに属している惑星は潮汐ロックがかかるほど重力の影響が少ないといえます。
まとめ
以上のことを考えると、スーパーアースは質量が大きいほど生命体の存在確立は少なくなり、主星は太陽クラスの質量を持つG型主系列星の回りを公転するハビタブルゾーンに属しているスーパーアースが高確率といえるような気がします。
ただG型主系列星系の惑星の発見が困難ということで、今後の観測技術の発達に期待したいところですね。