オリオン座と冬の大三角

冬の夜空は空気が澄んでクリアに見えることで天体観測には好条件ですが、南の空に真っ先に目に飛び込んでくるのがシリウス

オリオン座の後を追うように昇ってくるシリウスは時には木星と間違えるほど明るく輝いていますよね。

そんなシリウスは、おおいぬ座のα星ですが、こいぬ座のプロキオン、オリオン座のベテルギウスで冬の大三角を形成していることでも知られています。

シリウスの視等級はマイナス1.46等、冬の大三角の中でも飛び抜けて明るく輝くのはどのような理由があるのか・・・

今回はそんなシリウスについてのお話です。

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シリウスの基本データ

まずはシリウスの基本データから見ていきましょう。

比較のために冬の大三角を形成する「プロキオン」と「ベテルギウス」も載せておきます。

尚、シリウスとプロキオンは連星のため、両方とも主星である「シリウスA」と「プロキオンA」のみを載せています。

シリウスA プロキオンA ベテルギウス
質量(M☉太陽質量) 2.02 M☉ 1.42 ± 0.04 M☉ 20 M☉
半径(R☉太陽半径) 1.711 R☉ 2.048 ± 0.025 R☉ 平均 950 – 1000 R☉
視等級 -1.09 0.37 0.42
距離 (光年) 8.6 ± 0.04 11.46 ± 0.05 642.53 ± 146.77
表面温度(k) 9,940 6,530 ± 50 3,500

データを見るとシリウスの半径が3つの中で最も小さいのに視等級は最も明るいマイナス1.09等となっています。

この理由は地球からの距離が8.6光年と最も近いことにあります。

最近地球から最も近いとされる太陽系外惑星プロキシマbの発見で話題になった主星「プロキシマケンタウリ」までの距離が4.2光年ですから、8.6光年という距離も非常に近いといえます。

詳しい解説はこちら:プロキシマ・ケンタウリは人類が移住出来る惑星?

またシリウスは表面温度が約1万度と非常に高温になっているため色が青白いことも明るく見える要因となっています。

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シリウスは連星で質量は太陽の2倍

シリウスは主系列星である「シリウスA」と、白色矮星である「シリウスB」がお互いに公転しあっている連星になっています。

質量はシリウスAが太陽の2.11倍、シリウスBが太陽の0.98倍

その姿がこちら

シリウスA(中央)とシリウスB(左下)出典:Wikipedia

白色矮星とは太陽クラスの質量を持った恒星が寿命を迎えて核融合反応を停止すると膨張して赤色巨星となり、その後ガスを放出しながら縮んでいき、残された姿となった天体のことをいいます。

例えばこと座の環状星雲M57がその例です。

M57

中心に小さな白い点が見えますがこれが白色矮星です。

現在白色矮星となっているシリウスBもかつては核融合反応により明るく輝いていた時期もあったとみられ、現在のシリウスBの質量からするとシリウスAよりも重かった時期があったと考えられています。

その後シリウスBに寿命が来て赤色巨星となりの表面物質が、まだ質量の小さかったシリウスAに流れ込むと現在のような主系列星になったと考えられています。

また次のような話もあります。

動画で分かりやすく解説:BBC 神秘の大宇宙 DVD全9巻

残された白色矮星のシリウスBは高密度

こうしてガスを放出して白色矮星となったシリウスBも、太陽と同クラスの質量を持ちながら大きさは地球よりも小さいという、高密度な天体となります。

その密度は角砂糖一個で200kgという重さとなります。

高密度ということは重力も大きいことになりますから、周辺のガスも引き寄せ易くなるということ。

そして今後、シリウスAが寿命を迎えると赤色巨星となり表面物質が高密度なシリウスBに流れ込んで主系列星となって復活し、シリウスAは白色矮星になると考えられます。

シリウスAとシリウスBはしばらく死んだり生き返ったりを繰り返しながら存在し続けるみたいですよ。

まるでスリラーの世界のようで面白いですね。

ちなみに現在のシリウスBが白色矮星となったのは500万年前とされ、人類の祖先が誕生した時期とされています。

500万年前と遠い昔の現象と思うかもしれませんが、地球が誕生してから46億年経ったことを考えれば意外と最近起こったことなんですね。

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シリウスが超新星爆発を起こしたら地球は壊滅

シリウスの寿命は約10億年と考えられていますが、誕生してから2~3億年と考えられ、となると残りは7~8億年ということになります。

地球の運命は太陽の寿命にかかっていますから、地球の寿命は残りは長くて50億年、短くても15億年くらいはあると考えられます。

すると気になるのがシリウスが寿命を迎えて超新星爆発を起こした場合、8.6光年という短い距離だと壊滅的な被害を受けるということ。

下手をすれば人類絶滅ということも考えられます。

あわせて読みたい:超新星爆発の威力はどのくらい?

安心してください。

超新星爆発を起こすのは太陽の8倍以上の質量を持つ恒星であることが条件となります。

シリウスの質量は太陽の2倍くらいしかないため超新星爆発を起こすことは無いと考えられます。

ちなみに超新星爆発を起こして壊滅的な被害を受けるといわれる距離というのが50光年以内であるということ。

太陽系から50光年以内には超新星爆発を起こすような恒星は確認されていないために心配する必要はありません。

それよりも太陽が寿命を迎え、膨張しながら赤色巨星になる段階で地球は近くまで迫った太陽表面の熱により焼き尽くされてしまうと考えられているのでそちらを心配したほうがいいのかもしれません。

ただしそれも17億5千万年後からじわじわと表面化してくると考えられ、その頃には人類も他の惑星に移住しているのかもしれません。