見た目にも美しく、希少価値から何時の時代も一つの財産として重宝されてきた金、銀、プラチナ。
元々これらの貴金属は宇宙の何処かで作られてきたわけですが、一つの考え方がありました。
それが超新星爆発のエネルギーで作られたという考え方です。
しかしこの考え方が揺らぎつつあります。
当ブログで金、銀、プラチナは超新星爆発で作られたって知ってましたか?を書いていますが、どうやら超新星爆発だけではないようです。
というのも中性子星の衝突・合体によるエネルギーでも金、銀、プラチナは作られると考えている科学者がいるようなのです。
いったいどちらの考え方が正解なのでしょうか?
鉄より重い元素は恒星の内部では作られない
金、銀、プラチナのような貴金属元素は鉄より重い元素で、地球上で作られることはありません。
何故かと言えば地球上では鉄より重い元素が出来るような環境は作られることが無いからです。
その環境というのがこれまでの学説では超新星爆発だったのです。
学説によれば超新星爆発で鉄より重い元素がつくられるには次のような過程を辿ります。
宇宙が誕生した当初はほとんどが水素ガスだけだったのが、時間の経過とともにお互いの重力でくっ付きやがて大きな原始星に成長します。
そして原子星に集まった水素ガスの量が大きくなると中心部の圧力が高まり温度が上昇します。
中心部が高圧、高温になると水素が核融合反応を始め、その際に熱エネルギーを発して光り輝き、恒星の誕生となります。
その後恒星の内部では水素が核融合によりヘリウムに変換されヘリウムの割合が増えていきます。
このとき恒星の質量が大きいとヘリウムが核融合により重い元素に変換され最終的には中心部で鉄が溜まっていきます。
鉄は安定しているのでこれ以上核融合を起こすことが無くなる為、核融合の膨張エネルギーと自らの重力による収縮エネルギーのバランスが崩れて重力崩壊を起こし超新星爆発を起こします。
こうしたメカニズムの中で超新星爆発は超高圧、超高温のために鉄よりも重い元素、つまり金、銀、プラチナなどの重い元素が生成され、超新星爆発の衝撃で宇宙空間に撒き散らされそれが惑星の材料にもなったと考えられてきました。
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超新星爆発の頻度だけでは説明が付かない重元素の割合
ところがここにきて宇宙に存在している重い元素の割合が超新星爆発の発生ペースやそのエネルギーでは説明出来ないことが分かってきたのです。
あるいは、超新星爆発による重元素生成シミュレーションの精度が上がってきたことによりより正確な数値計算まで出来るようになると,超新星爆発での重元素合成ではうまくいかないことが分かってきたといいます.
さらに超新星爆発は生成された元素を崩壊させてしまうといった考え方が浮上してきたのです。
そこで注目されたのが中性子星の衝突・合体による金、銀、プラチナなどの重元素の生成です。
これは国立天文台と東京大学による研究により、金、銀、プラチナは中性子星の合体によって生成された可能性が高いことがわかったとのこと。
2017年に中性子星の衝突・合体は重力波の観測に成功したことで証明されていますし、シミュレーションでも十分な重元素を供給できることが確認できたといいます。
中性子星が連星になっていることが条件
しかしここで疑問が生じます。
それは中性子星になるような質量の大きな恒星が合体するには連星となっている必要がありますが、こうした質量が大きな恒星が連星となっている確率が低いからです。
中性子星は太陽の8倍~25倍の質量を持った大きな恒星が寿命を向かえて超新星爆発を起こした後に残される天体ですが、連星となっている質量の大きな恒星が超新星爆発を起こし、さらに中性子星同士の合体に至るまでは珍しい現象とされているため、宇宙に存在しうる重元素の量が説明できないといいます。
たとえ中性子星の衝突・合体による衝撃波が検出できたとしても、その後の現場はどのようになっているのか、詳細はまだ分かっておらず、重元素の生成が中性子星の衝突・合体だけでは説明が不十分なんだそうです。
重元素の生成量が超新星爆発や中性子星の衝突・合体だけでは説明が付かないとすれば、他に考えられるのは「極超新星爆発」という現象が考えられるといいます。
極超新星爆発とは通常の超新星の10倍以上の爆発エネルギーを持ち、その爆発エネルギーは重元素の生成に十分だとされています。
ただ、極超新星爆発も超新星爆発のときと同じように生成された元素を崩壊させてしまうことも考えられるため、この考え方も決定打とはいえないようです。
まとめ
重元素の生成には超新星爆発や中性子星同士の合体、極超新星爆発といった現象による可能性はあるものの、今のところははっきりしていないようです。
いずれにしても金、銀、プラチナのような貴金属に希少価値があるのはそれだけ量が少ないからであり、宇宙で生成されるには厳しすぎる条件が背景にあることは間違いありません。
今後中性子星の衝突・合体を詳細に観測することで重元素の生成現場を押さえることが重要になってきます。
重力波の観測が確立されたことで中性子星の衝突・合体の観測ポイントが絞られることにもなり、重元素生成に関する疑問は近いうちに答えが示される気がするのは私だけでしょうか・・・