火星の水に塩分が含まれていたと推測されていることが話題になっています。
火星に水なんてあったっけ?って思うかもしれませんが、実は数億年前の火星には大量の水で満たされた過去があり、しかも地球の海と同じようにしょっぱくてミネラル豊富というのです。
しょっぱくてミネラル豊富とくれば、火星には過去に生命体が存在していた可能性があるかもしれないというのです。
今回は火星の水に塩分が含まれていたことや、消えてしまった理由などに注目してみました。
日本の大学の研究チームが独自の手法で火星の水の成分を推測
今回話題になっている過去の火星の水質分析ですが、金沢大学と東京工業大学などの研究チームにより発表されたもので、火星に過去、存在していたと見られる水質を詳しく推測したのを世界で初めて成功したということです。
その分析元となったのが米航空宇宙局(NASA)が運営している火星無人探査機「キュリオシティ」が、かつて湖だったとされる「ゲールクレーター」で採取した鉱物のデータです。
「ゲールクレーター」は隕石の衝突により形成されたと見られ、直径約150kmの中にキュリオシティが入って採取した鉱物の分析データなのだそう。
詳しい動画があるのでご紹介します。
英語がわからない方は自動翻訳を日本語にしてご覧ください。
出典:NASA
こうして採取した鉱物の分析データを金沢大学の福士圭介准教授をはじめとする研究チームが、放射性廃棄物の地層処分の分野で開発された鉱物中に含まれる水を調べる方法を利用して水質が推測されたといいます。
その推測によると、火星の水にはミネラルも豊富に含まれていたことも推測され、塩分濃度は地球の海水の三分の一で地球上でモンゴルにある低濃度の「塩湖」に似ているとされています。
その濃度は味噌汁くらいの塩分濃度で、生命の誕生や生存に適していたと考えられています。
この研究成果は英国科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載される予定だとか。
太古の火星には広大な海が存在していた
今の火星は水が無く干からびた環境になっており、気圧は地球の大気の1%程度と、生命体が生存するには非常に厳しい環境となっています。
ところが40億年~35億年前には火星は全体の2割ほどが海に包まれ、川も流れていたと考えられています。
上の画像は直前まで液体が流れていた痕跡とされ、したの画像は長期間侵食されて形成した川や三角州のような姿に見えます。
これらの画像を見ると明らかに液体が流れていたとしか考えられないですよね。
過去どころか現在の火星も水が流れているのかも知れないのです。
では何故火星の水は消えてしまったのか・・・
水を留めておくには小さすぎる火星の質量
火星の水が消えてしまった理由にはいろんな考え方がありますが、最も有力な説が火星の質量の小ささにあります。
質量が小さいということは重力も小さくなり大気を留めておくことも出来なくなります。
加えて質量が小さくなると太陽風から大気を守る役目をする磁場の生成も弱くなります。
NASAのこれまでの観測による現在の火星の磁場の様子を描いたイメージCGがあります。
地球を大きく取り巻く磁場に対して火星は所々にポツリポツリと小さな磁場が表面からのぞいているだけです。
何故、このような姿になってしまったのか・・・
火星の質量は地球の0.11倍といった小ささのため数十億年前に冷えてしまい、内部の対流が滞り、ダイナモ効果による磁場の生成が弱くなってしまったことが原因と考えられています。
大気圧が下がれば水も蒸発し易くなりますから、火星の海も消えてなくなったと考えられるわけです。
詳しくは火星の大気が消失したのは磁場が無いから?をお読みください。
適度な塩分濃度とミネラルだけで生命体は存在する?
今回大学研究チームによれば、太古の火星の水に塩分をはじめ、マグネシウムやカリウムなどのミネラルが含まれていたとの推測により生命体の存在に適していたと考えられているようですが、果たして生命体の痕跡が見つかるのか・・・
現在、火星に水が流れているかもしれないとの報告がありますから、水が採取できればひょっとしたら生命体が生息しているのが見つかるかもしれません。
生命体一つとってもそれは地球環境をベースにして考えられることであって、火星の環境では地球での常識では考えられない、また違った生命体の存在も考えなければなりません。
今後どのようにして分析を進めていくのか興味は尽きませんね。
今回の研究成果ははやぶさ2が持ち帰る予定の小惑星「りゅうぐう」から採取した岩石の分析にも利用できるかもしれないとのことで、日本の宇宙開発もまた一つ世界をリードすることになりますね。
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小惑星に含まれる水に塩分やミネラルが含まれるのか、地球の生命体の起源に迫る大発見が近いかもしれません。