太陽系の第一惑星である水星は、太陽に最も近い惑星で最も小さな惑星です。
太陽に近いのと内惑星のために地球から見ていつも太陽の近くにあり観測の難しい惑星の一つです。
そんな水星は最高温度は500℃近くまで上昇するといいますが、夜間はというとマイナス180℃まで下がります。
平均温度でも180℃と、とても厳しい環境となっています。
しかしこれでも平均温度に限っては太陽から離れている金星よりも水星のほうが低いんですよ。
今回は水星の平均温度が金星よりも低い理由を解説してみます。
水星の基本データ
水星はこれまでの無人探査機により詳細なデータが得られています。
詳しい解説はこちら:水星の特徴
水星のデータ一覧をご覧ください。
比較対象のため金星のデータも載せておきます。
水星 | 金星 | |
---|---|---|
直径 | 4900km | 12,100km |
公転半径 | 5791万km | 10,820万km |
自転周期 | 59日 | 117日 |
公転周期 | 88日 | 225日 |
赤道傾斜角 | 0.027度 | 177.4度 |
大気圧 | ほぼ真空 | 90気圧 |
重力 | 3.7 m/s² | 8.87 m/s² |
他の惑星については太陽系の惑星の大きさと距離感を参照してください
月の直径が3,474km、火星の直径が6,779kmなので水星は月より一回り大きく火星より一回り小さいくらいです。
太陽からの距離は公転半径を見ると水星は金星の半分くらいしかありません。
水星が受ける太陽の熱エネルギーは地球の7倍
水星は太陽からの距離が5791万kmと地球の約1億5000万 kmと比較して約3分の一と近い距離にあります。
そのため、太陽から受ける熱エネルギーは地球の7倍とも言われ、非常に多くの熱を受けていることになり500℃にまで上昇するもの太陽から近いのが原因です。
太陽からの距離で受ける熱エネルギーにもこれだけ差があるのです。
水星の温度が金星よりも低いのは大気が関係
金星の温度は高いときで500℃近くまで上昇することがあり、最低温度でも400℃くらいといわれています。
ということは金星の温度は平均しても450℃くらいとなり、水星よりも遥かに高温ということになります。
水星よりも金星のほうが太陽から遠い分温度は低くなりそうなものですが、実際は金星のほうが高くなっています。
これは水星よりも金星のほうが大気圧が高いことが要因の一つです。
基本データを見ると金星は大気圧が90気圧と非常に高圧になっています。
これは気圧が高いと温度も高くなるからで、地球の90倍もある金星の大気圧であれば高温になるのも理解できますよね。
しかも大気の成分は95%が二酸化炭素です。
二酸化炭素といえば地球温暖化の元凶とも言われ、世界中で削減が叫ばれていますよね。
しかし、地球の大気で二酸化炭素の割合はたったの0.04%。
たったこれだけの二酸化炭素が温暖化の原因と言われているのに金星は95%が二酸化炭素で占められています。
正に金星が高温になってしまった条件が重なってしまったというわけです。
水星の夜間が極寒なのは大気が殆ど無いのから
水星の大気は地球で言えば国際宇宙ステーションが飛行している高度に匹敵するくらいの空気しか無いといいます。
つまり殆ど真空ということです。
ということは地球の月と同じということ。
ちなみに月は日光が当たっているときには110℃、当たっていないときにはマイナス170℃となっています。
月も水星も日光が当たらなければ似たような低温になるんですね。
金星が夜間でも温度がさほど低下しないのは大気があって空気が常に循環しているためです。
自転周期で影響を受ける地表の温度
基本データも見ると水星の自転周期は59日となっており地球で言えば一周するのに2ヶ月近くかかるということです。
しかも公転周期が88日ですから59日かけて自転しても、一回自転したときにはすでに67%も公転しているので太陽の位置もそれだけ移動することになります。
これからいえることは、水星の自転が太陽を追っかけるような状態になり、日没から次の日没まで176日もかかるということになります。
つまりいったん日が沈めば176日の半分である約84日待たなければ日が昇らないということです。
自転周期が短ければ日中に温められた余熱が残っているのでさほど冷えないのですが、これだけ自転周期が長いと太陽光が当たらない領域はどんどん熱が逃げていき、朝を迎えるときには冷え切っているということになります。
逆に日中が500度までに上昇してしまうのも自転周期が遅いのが要因の一つです。
日中の500℃、夜間のマイナス170℃と水星の温度がこれだけ差があるのも大気が殆ど無いのと自転周期が遅いことが要因といえます。
それでも平均温度が水星よりも太陽から受ける熱エネルギーが少ないはずの金星の方が高いのも大気があるからで、地球や火星もいかに大気に支配されているのかよく分かりますよね。