2016年2月17日JAXAと三菱重工によりエックス線天文衛星「アストロH」が打ち上げられ、見事軌道への投入に成功しましたね。

これまで「アストロH」と呼んでい衛星の名前は、今後のエックス線天文観測でもっとも重要な位置づけとなることを期待して「ひとみ」と命名されました。

「ひとみ」は全長14m、重さ2.7トンで日米が共同で開発したものでその費用は約400億円とされ、現在地上約580kmの軌道を周回しています。

ブラックホールを観測するのにエックス線を観測することは重要なことなんだそうで、「ひとみ」によりこれまでより格段に高精度でエックス線が観測できるとのこと。

ブラックホールはこれまでの観測では存在することは証明されてきましたが、まだまだ謎の多い存在で今後の観測によりブラックホールの詳細が解明されると期待されています。

ところで報道で何度も出てくる「エックス線」ですが、エックス線を観測することでブラックホールの謎が解明できるかもしれないと言われているんですが、いまいち理由が判りませんよね。

そこでブラックホールに関係が深いとされる「エックス線」について調べてみました。

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エックス線は大気で吸収されてしまう

エックス線の観測は日本のお家芸とも言われるくらい世界をリードしているとされており、1979年に始まった「はくちょう」によるブラックホールの観測はよく知られています。

恒星やブラックホールなどの天体は、「紫外線」「赤外線」のほかに、「ガンマ線」「エックス線」といった電波を出しているとされています。

地上から電波望遠鏡でこれらの電波を観測することで宇宙の謎を次々に解明してきたわけですが、この電波の中で「ガンマ線」「エックス線」は大気により吸収されてしまうために肉眼で見ることが出来ないので人工衛星などを使って観測してきたそうです。

それを今回大気圏外から観測できるようにと「ひとみ」が打ち上げられたわけですね。

ちなみに「ひとみ」は日本のエックス線天文衛星では6基目だそうで、2005年に打ち上げられた「すざく」に比べて100倍も暗い天体を観測できるとか。

動画で分かりやすく解説:BBC 神秘の大宇宙 DVD全9巻

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エックス線を観測することでメカニズムが判る

恒星がブラックホールに吸い込まれた後のイラストを見たことありませんか?

たとえばコレ

ブラックホールの想像図
出典:米航空宇宙局

これを見ると恒星がブラックホールに近づいて吸い込まれていく姿が描かれていますよね。

その時恒星からガスがブラックホールに向かって流れ込み、ブラックホールの周りにガスが円盤状に描かれています。

このときお互いに元々回転しているためすぐに吸い込まれるのではなく、回転しながら徐々に吸い込まれていき、円盤状に回転しているのです。

これを「降着円盤」と呼んでいます。

これがお互いの摩擦により回転を失っていくことでブラックホールに吸い込まれていきます。

このときのエネルギーにより「降着円盤」は何百万度という高温になり、可視光や赤外線を飛び越えてより高エネルギーのエックス線が放出されるのです。

ちなみに「降着円盤」に垂直方向に飛び出しているのが宇宙ジェットよ呼ばれ、ブラックホールの周りに存在している磁場に沿って生じていると考えられています。

この宇宙ジェットはいかにもブラックホールから噴出しているように見えますが、実はブラックホールに落ち切れなかった降着円盤の一部のガスから出来ているとされています。

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エックス線はブラックホール自体から出ているのではない

光さえも吸い込んでしまうブラックホールがどうしてエックス線を発するのか不思議に思うかもしれませんが、エックス線はブラックホール自体から発せられているのではなく、ブラックホールの周辺で「降着円盤」や宇宙ジェットといった現象により発せられているのです。

つまり、ブラックホールに落ちる前のエックス線を観測しようというものです。

ちなみにブラックホールに落ちる前の光さえ抜け出せなくなってしまう距離のことを「シュヴァルツシルト半径」と呼んでいます。

「シュヴァルツシルト半径」内に落ちてしまうと光をはじめ、エックス線も抜け出すことはできません。

以上簡単にブラックホールについてまとめてみましたが、このようなブラックホールの姿をエックス線で写しだそうとしているのが「ひとみ」の目的です。

今後のエックス線観測でブラックホールの壮大な姿が、私たちの“ひとみ”に飛び込んでくる日も近いかもしれません。