H2Aロケットがカナダのテレサット社の通信衛星を搭載して2015年11/24(火)15時23分(日本標準時)に種子島宇宙センター大型ロケット発射場から打ち上げる予定であることが報道されました。
これだけ聞くとさほど驚くことも無いように感じますが、今回の打ち上げが「商業衛星」ということに意義があるのです。
商業衛星ですから民間の会社が作っているわけですから打ち上げコストの削減を求められるわけです。
ところが今回の打ち上げ場所が赤道地点で無いことに意味があります。
意味があるといってもメリットでは無くて逆にデメリットになるんですよ。
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赤道付近から打ち上げるのは最も燃料が節約できるから
ロケットを打ち上げるときは地球の自転による遠心力を利用して燃料を少しでも少なくて済むようにします。
赤道付近というのは地球上では最も遠心力が強い場所ですから、商業衛星の多くは赤道付近から打ち上げられます。
もちろん赤道上に領土を持っている国なら問題ないですが、そうでない国は、他の機関に打ち上げを依頼するか、できるだけ緯度が低い場所を選ぶことになります。
日本が南の種子島をロケット打ち上げ場所に選んだのはそういう理由もあるのです。
静止衛星は、重さの半分以上が燃料
今回の商業衛星は高度3万6千kmの静止軌道に乗せなければならず、赤道付近から打ち上げるのと比べるとそれだけ燃料がかかることになります。
しかも静止衛星は重さの半分以上が燃料となっているため、打ち上げ用のロケットの燃料がそれだけよけいにかかってしまうのです。
人工衛星というのは軌道を修正するために小型ロケットを使用しています。
これは大気圏外といえども全くの真空状態では無く多少の空気抵抗を受けたり、月や太陽の引力の影響を受けるために、人工衛星は少しずつ軌道から外れてしまうからです。
衛星の寿命を伸ばす為には燃料をどれだけ積めるか
ロケットエンジンですから当然燃料もいるわけで、燃料が無くなった時が人工衛星の寿命を迎えたということになります。
つまり、燃料が多ければ多いほど人工衛星が長期間使用できるのです。
ところが今までのH2Aロケットでは赤道付近から打ち上げるロケットと比較して燃料が多く積めないために改良を加えて同程度の性能を持つことが出来たみたいです。
これまでのH2Aロケットだとそれだけ商業衛星の軌道修正用ロケットエンジンの燃料も少なくなるので、改良型H2Aロケットがそれをクリアーできたということは大きな成果ですよね。
改良型H2Aロケットで一気に静止衛星軌道まで
通常静止衛星はロケットで打ち上げた後地上数百キロで切り離し、静止衛星の自力飛行により静止軌道に入るまで大がかりな軌道修正が必要で、これまでのH2Aロケットでは不可能だったとされています。
それを可能にしたのが静止衛星をそのまま静止軌道に持っていくことを可能にしたのが改良型H2Aロケットです。
成功すれば世界から注目
今回の打ち上げにはかなり力を入れているようで、成功すれば世界から注目され、今後の宇宙開発にも弾みがつくでしょうね。
現在商業衛星の打ち上げは欧州とロシアが大きなシェアを占めているそうなので国際競争力も強化されるでしょう。
そして今回商業衛星の打ち上げを日本が初めて引き受けることができたのは、日本のロケット技術の信頼性はもちろん、打ち上げコストが安く済むことではないでしょうか。
火星有人探査にも日本のロケット技術が採用されるかもしれません。
ひょっとしたらテレビドラマ「下町ロケット」に出てくるような町工場からバルブを供給しているかもしれませんよ。
日本人の職人技術は世界トップレベルですから。
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