火星衛星探査計画(MMX)
出典:Wikipedia

2019年7月12日、世界で初めて小惑星の地下サンプルの採取に成功したと思われるはやぶさ2による小惑星リュウグウのサンプルリターン計画

宇宙航空研究開発機構(JAXA)による一連の作業が世界初ということで日本中が歓喜に沸いていますが、次の計画が密かに進んでいるようです。

その計画とは「火星衛星探査計画 MMX」

小惑星リュウグウの次なるターゲットは火星の衛星フォボスということ。

フォボスの組成を分析することでどのような事が分かるのか。

いつごろ地球に持ち帰るのか。

火星衛星探査計画 MMXの概要について調べてみました。

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火星衛星探査計画 MMXの概要

火星衛星探査計画 MMXは、Martian Moons eXplorationの中から1つずつ文字を拾って「MMX」と命名されたとの事。

この計画は、宇宙航空研究開発機構 (JAXA) 主導によるもので、アメリカ航空宇宙局 (NASA) 、ヨーロッパ宇宙機関 (ESA)なども参加する国際ミッションでもあるとの事。

どうやらJAXAはフォボスからサンプルを持ち帰る一連の作業に専念し、ガンマ線・中性子分光器のような観測機材や、MMXのミッション軽減のための小型ローバーの開発を他国に任せるような形にするようです。

互いの得意な分野を生かしてフォボスのサンプルリターンの成功に結び付けようということでしょうね。

火星衛星探査計画 MMXがフォボスのサンプルリターンを目指す理由

火星の衛星フォボスとダイモスを観測してこれらの衛星がどのように今のような状態になったのかを知ることが目的とされています。

地球と月の関係のように小天体との衝突で飛び散った岩石の破片が集まって出来たのか、あるいは火星の重力で他の天体を捕獲したのかを解明するため。

さらに捕獲により形成されたというのであれば水のような揮発性物質がどのように運ばれてきたのかを知るきっかけにもなるのだそう。

また太陽系の成り立ちにもヒントが与えられるのではないかとの期待があるそうです。

そのためにもフォボスのサンプルを持ち帰って分析する必要があるのでしょう。

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火星衛星探査計画 MMXの主なスケジュール

火星衛星探査計画 MMXの打ち上げ予定は2024年2025年火星の周回軌道に乗せ、一連の作業を終えて2029年地球へ帰還という計画となっています。

フォボスでのサンプル採取を終えたあとダイモスに接近して観測する予定。

サンプルリターンにおいてはすでに「はやぶさシリーズ」で多くの実績を残しているだけに計画の遂行には自信を持って挑むことが出来るでしょう。

動画で分かりやすく解説:BBC 神秘の大宇宙 DVD全9巻

火星衛星探査計画 MMXが目指すフォボスの特徴

フォボスは火星の第一衛星で、第二衛星のダイモスよりも大きく、より内側を公転しています。

火星表面から6,000kmよりも内側を公転しているため公転速度が速く、主星である火星の自転速度を上回っているので1日二回昇るとされています。

分かり易くするために火星と、比較のためにフォボス、ダイモス、地球の月の基礎データを一覧にしてみます。

衛星名 直径(km) 質量(kg) 自転周期 公転周期(時間) 平均公転半径(km)
フォボス 22.2±0.3 1.26 ×10^16 7 時間 39.2 分 7 時間 39.2 分 9,376
ダイモス 12.4±0.36 1.8 ×10^15 1日 6時間 17.9分 1日 6時間 17.9分 23,458
地球の月 3,474.3 7.35×10^22 27日7時間43.2分 27日7時間43.2分 384,400

火星の基礎データ
直径:6,794.4 km
質量:6.4191 ×10^23 kg
自転周期:24.6229 時間(1.026 日)

ご覧のようにフォボスやダイモスは地球の月と比べて非常に小さな衛星で、しかも月と同様に自転周期と公転周期が同じのため、火星には同一面しか向けていないという潮汐ロックがかかっていることが分かります。

また直径も極端に小さいがために形も歪です。

その姿がこちら

フォボスやダイモス
出典:Wikipedia

フォボスは少しずつ火星に近づいており、3,000万年~5,000万年後には潮汐力によりバラバラにされて火星の環になるか、そのまま落下すると見られています。

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火星衛星探査計画 MMXでは、効率の良いサンプリング技術を検討

はやぶさシリーズでは世界で唯一、小惑星のサンプルを地球に持ち帰るミッションを実現しましたが、火星衛星探査計画 MMXでは、より多くの、しかもいろんな採取方法が可能な装置を検討しているそうです。

確かにはやぶさ2では小惑星リュウグウの地下サンプルを採取するために表面に弾丸を撃ち込んで、飛び散った地下の岩石破片が表面に積もったところを採取する方法をとっていましたね。

そのときクレーター形成の際に飛び散った岩石の破片が機体への衝突を避けるために小惑星の裏側に避難する作業が必要でした。

これだけ大掛かりな作業をしても採取できるサンプルはごくわずかとされているため火星衛星探査計画 MMXでのサンプリング装置はまったく違った方法で採取できるように設計される予定だとか。

一回のサンプリングで10g以上を要求されているそうで、これははやぶさ2の100倍以上とかなり高い数値となっているようです。

火星衛星探査計画 MMXの目的と役割

これまで解説してきたのと他にMMXの目的と役割は、火星圏へ往復時術の確立や、より高度なサンプリング技術、新たな探査地上局を使用した通信技術の獲得があります。

50年前のアポロ計画をはじめ、火星の探査も数年後には人類が降り立つかもしれないところまで来た感があります。

人類は地球外探査で確実に技術を発展させてきており、特に日本の宇宙開発技術の発展には目を見張るものがあります。

日本の民間のロケットも先日初めて宇宙空間までとどく等、今後よりいっそう宇宙開発競争が激化するものと思われます。

ひょっとしたら火星に初めて降り立つのは日本人なのかもしれませんよ。