2017年2月22日付けのイギリス科学誌の「ネイチャー」での重大発表が話題になっています。
昨年の「プロキシマb」に続いて太陽系外惑星の発見なんですが、これが恒星の周りを7個の惑星が公転しているのを発見できたというもののようです。
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太陽系外惑星という発見なら、これまで数千個発見されているだけにさほど珍しいことではないのですが、驚きなのが一つの恒星に7個の惑星が一緒に見つかったということです。
しかも大きさや重さ、温度が地球と似ていることから、大気や水が存在して生命を育む条件が揃っている「地球型惑星」の可能性があることも指摘されているのです。
この発表で専門家は天の川銀河は想像よりもはるかに多くの地球に似た惑星が存在するかもしれないと指摘しているそうです。
この惑星に地球外生命体が見つかるかもしれないと期待されているようですが、はたして条件は整っているのか・・・
今回は発見された7個の惑星について調べてみたのでご紹介します。
7個の惑星が公転しているのは赤色矮星
7個の惑星が公転している恒星は、水がめ座の方向にあって直径が太陽の10分の一、よりも小さくて表面温度が3000度と低温な赤色矮星とのこと。
その恒星の名は、TRAPPIST-1(トラピスト1)。
赤色矮星とは宇宙においてはまだ若く、いわば赤ちゃん的な恒星です。
宇宙に存在する恒星の70%は赤色矮星とも言われ、小さな星で質量は太陽の7~50%ですが、他の恒星と同様に核融合が行われています。
何故宇宙の恒星の70%が赤色矮星と考えられているのかというと、赤色矮星は核融合の材料である水素の量が少なくても、ゆっくりと核融合が行われているため寿命が1~10兆年と長寿になるわけです。
宇宙が出来てから137億年ということを考えれば、寿命を迎えた赤色矮星は無いわけで、赤色矮星が赤ちゃん的な恒星と考えられているのはこうした理由があるからです。
※当ブログをお読みになった方から「赤色矮星は若い星ではないですよ。むしろ長寿命で古い星が多いくらいです。」とのご指摘を受けましたが、宇宙が誕生してから現在までの137億年を差し引いても残り数千億年以上寿命が残っていることになるため赤ちゃん的な恒星と表現させていただきました。あらかじめご了承ください。
ちなみに、太陽の寿命は100億年でそれより大きな質量の恒星だと数千万年とさらに寿命は短くなります。
きっと人類の移住先は最終的には赤色矮星を公転する惑星になるのでしょうね。
ただ人類が住むことが出来る惑星はすでに宇宙人が住んでいる可能性もあるわけで、映画「アバター」のように先住民と争うことが無いようにしたいものです。
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7個の惑星はトランジット法により発見される
今回発見された7個の惑星は恒星の表面を通過する際に光の僅かな変化を読み取り見つけ出す「トランジット法」と呼ばれる方法で発見されたものです。
赤外線を捉えるスピッツァー宇宙望遠鏡や南米チリにある欧州南天天文台の望遠鏡により観測したとのこと。
トランジット法はこれまで太陽系外惑星の検出に使われている主な方法で、実際に何個か成功しています。
ただしトランジット法は恒星の表面を惑星が通過することが条件ですから公転面が地球に向いている必要があります。
つまりすぐ近くに太陽系外惑星があっても発見できないこともありうるわけです。
ちなみに太陽系外惑星の検出方法として他に、「ドップラー法」「マイクロレンズ法」「パルサー・タイミング法」があり、実際に惑星の発見に成功しているようですが、「トランジット法」が広く使われているところを見ると最も確実なんでしょうね。
恒星に近いために問題が多い
今回発表された赤色矮星は質量が太陽の10分の1と小さくて表面温度もかなり低く、7個の惑星との距離も太陽と地球の距離の100分の1~16分の1とかなり近いとされています。
これらの情報から計算したところ、内側から4~6番目の惑星に海や大気が存在する可能性が高いとか。
また、惑星の公転周期が最少1.51日から最大でも20日と、地球のように365日と比較してかなり短いとされています。
ただ、恒星に近ければ近いほど問題も多く、生命が住めるようになるにはいくつかの課題をクリアしないといけません。
その問題点とは
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潮汐ロックがかかり易い
恒星と惑星の距離が短すぎるとお互いの引力で働く潮汐力により常に同じ方向に向いてしまうことがあります。
これを「潮汐ロック」と呼んでいますが、たとえば地球と月の関係がそうです。
月は常に同じ面を地球に向けていますが、これも潮汐ロックがかかっているからです。
こうなると昼側は灼熱地獄、夜側は極寒地獄となりかなり厳しい環境になるでしょう。
ただし、昼と夜の境目になると何とか住める環境になるかもしれませんが・・・
恒星から発せられるフレア
惑星は恒星に近過ぎると恒星から発せられるフレアやX線により大気が吹き飛ばされる可能性があると言われています。
フレアとは恒星の活動域で突発的に起きる爆発現象で、たとえば太陽フレアの場合水素爆弾10万~1億個と同等の威力があるとされています。
質量が太陽の10分の1とはいえ、今回の報告によれば最も遠い惑星でも太陽と地球の距離の16分の1とかなり近いので大気が吹き飛ばされている可能性は大きくなるといえるのではないでしょうか。
プロキシマbの発見時でも同じことが言われていたことを考えれば、やはりトラピスト1でも同じことが考えられるのではないでしょうか。