2019年にブラックホールの画像撮影に成功して以来、大きな注目を浴びているブラックホール周辺の星の動き。
史上初めて捉えたブラックホール周辺の姿に予想通りといった声が多かったように感じます。
そして私たちが属する天の川銀河の中心にある超大質量ブラックホールの姿はすでに捉えることに成功し、後はデータを分析して動画として発表する予定とされています。
ただこれらは全て一方向からのブラックホールの姿であり、裏から、横からといった姿も同時に観たいと思うのは誰しも同じですよね。
そんな中NASAがブラックホールのシミュレーション動画が公開され話題になっていますが、その動きが何とも不思議なんですよね。
今回はブラックホールの不思議なシミュレーション動画についてご紹介します。
ブラックホールを囲んでいるのは降着円盤
ブラックホールは光さえ脱出できない膨大な重力を持ち合わせている天体です。
なのでブラックホールに接近する天体はその膨大な重力に耐えられず、崩壊していきます。
ブラックホールは膨大な重力により接近してきた恒星をバラバラに引き裂いて吸い込むような現象がありますが、これを「潮汐破壊」と呼び、バラバラにされた恒星の物質がガス状となりブラックホールを囲んだ円盤のような状態に変化します。
これを降着円盤と呼んでいますが、2018年にNASAにより打ち上げられたトランジット系外惑星探索衛星がその現象を観測しました。
ブラックホールは太陽の600万倍の質量で、バラバラにされた恒星は太陽と同質量だろうとされています。
観測による収集したデータを元に作成されたシミュレーション動画があります。
出典:NASA
球形を保っていた恒星がいきなり歪な形状になり、ガス状となった物質はブラックホールに吸い込まれてブラックホールの周りで円盤を形成するのが描かれていますね。
これが「降着円盤」と呼ばれるもので、中心にブラックホールが存在していることが証明されます。
ブラックホールのシミュレーション動画をNASAが公開
NASAはこうしたブラックホールがどのように見えるのかをシミュレーション動画にして公開しています。
そのシミュレーション動画がこちら
ブラックホールの周りをオレンジ色のガスが高速で回転している様子が分りますね。
最も内側に見える丸いラインは「事象の地平面」と呼ばれるラインで、ブラックホールの大きさを表すことに使われています。
事象の地平面から内側に浸入した全ての物質は二度と脱出できないとされ、光さえも脱出できないことから何も映らない真っ黒に見えます。
降着円盤を真横から見たときに垂直に立ち上がって見えるのはブラックホールの膨大な重力により歪みが生じるためにこのように見えるのだとか。
その歪みにより降着円盤の表と裏が同時に見えるというところがブラックホールの物理法則が通用しない世界といえるのかもしれませんね。
重力レンズによる「アインシュタインの十字架」と同じ
このような現象は「重力レンズ」によるもので、有名どころでは「アインシュタインの十字架」があります。
「重力レンズ」とは、アインシュタインの提唱による一般相対性理論から生まれた考え方で、後方の天体が前方の天体の重力により光が曲げられて観える現象です。
実際に太陽の後方に隠れて観えるはずのない天体を観測した例が過去にあります。
最も有名なのは「アインシュタインの十字架」で、後方にあった一つのクエーサーが手前の天体の膨大な重力により4個に分かれて見えたとされるものです。
動画で分かりやすく解説:BBC 神秘の大宇宙 DVD全9巻
重力レンズによるブラックホールの鮮明な姿を捉える日が来る?
2019年4月に史上初めてブラックホールの姿を捉えることに成功しましたね。
ちょっとぼんやりとした感じに見えますが、ここまで鮮明に捉えることに成功したのは、世界の複数の電波望遠鏡を駆使して地球規模の大口径望遠鏡によりデータが収集できたことにあります。
これ以上の方法は難しいかもしれませんが、観測技術の進歩が著しい昨今、近いうちに重力レンズでシミュレーション動画のようなブラックホールの姿を捉えることが出来るようになるかもしれませんね。