月を観ると「ウサギの餅つき」だったり、「泣き顔」だったり、「カニ」や「ライオン」など、昔から月の模様をいろんなものに見立ててきました。
それにしてもこうした模様はどのようにして出来たのでしょうか?
今から50年前に人類が初めて月に降り立ち岩石を持ち帰ったことで月のことは全て解明したと思いきや、まだまだ分かっていないことがあるようで・・・
特に月の海に関連する謎が多いそうで・・・
今回はそんな月の海にまつわるお話をご紹介します。
月の海が黒いのは巨大隕石の衝突が原因?
冒頭でご紹介している満月の画像を見てください。
「ウサギが餅をついている」とされる模様が全体に黒っぽいのが分かりますよね。
これは全て月の海とされる部分で月全体の16%を占めているといいます。
見た目は半分くらいを占めているように見えますが、月の裏側には海の部分が非常に少なく、表側に集中しているためにこうした数字になるのです。
色合いが違うのでわかり難いかもしれませんが、裏側には海の部分が殆ど無いのが分かりますよね。
この海が他の部分よりも黒っぽく見えるのは、主に黒い玄武岩質であることが理由です。
では何故、月の海といわれる部分だけが玄武岩質になったのか・・・
これには諸説あって、有力な説は月が誕生して間もない頃に遡ります。
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誕生したばかりの月は白かった?
46億年前に太陽系が誕生したばかりの頃、地球に火星クラスの天体が衝突して散らばった破片が集まって出来たのが月とされています。
詳しい解説はこちら:月の誕生で最も有力な説とは
所謂これが「ジャイアントインパクト」と呼ばれる説ですが、このときに出来た月は白かった可能性が高いといいます。
誕生直後の月はジャイアントインパクト後の影響で内部までどろどろに溶けてマグマの海が形成されたと考えられています。
その後、長い年月を経て冷えて固まるわけですが、マグマを構成している岩石のうち密度の大きい「かんらん石」や「輝石」は深い位置に沈み込み、密度の小さい軽い鉱石が表面に浮かび上がって結晶化していきます。
この軽い鉱石はカルシウムやアルミニウムを多く含むために白っぽくなるため月が誕生した当初は白かったと考えられているのです。
それから5~6億年後、今から40億年ほど前、月に直径数十kmの巨大な隕石が衝突したときに、巨大なクレーターが形成され、内部までえぐられた割れ目から地下深く沈んでいたマグマがあふれ出し、表面を覆いつくすことになります。
このマグマは玄武岩が主成分とされるため黒っぽくなったというのです。
月の海が裏側に少ない理由
月の海は表側に集中して裏側には殆どありませんが、この原因は現在も解明されておらず、定説はありません。
一説にはマグマの分布が表側に偏っているとか、表と裏では地殻の厚みが違うためなどの考え方があります。
ご存知のように月はいつも同じ面を地球に向けていますが、これは月の重心が地球側に偏っているためで、裏と表で地殻の厚みが違うのも同じ面を見せる要因となっています。
そのため月の表側は隕石が衝突した際に内部のマグマが流出しやすくなったために海が多いという要因とされているようです。
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月の海には水がある?
海というからには海水で満たされていると昔の人は考えていたようですが、ご存知のように月の海には水は存在しません。
しかし近年の観測により月には大量の水が海ではなく地下に存在していることが確認されています。
これはNASAの探査機LADEE(ラディ―)が、隕石が衝突する際に月面から放出される水を検出したとされ、月の表面からわずか7.5センチメートルほど下の層に、予想よりもはるかに多くの水があることが判明したというのです。
その量は観測したものだけで年間220トンにもなるといい、月全体で考えればかなりの量になるかもしれません。
もし月で水が確保できるとなれば、飲料水をはじめ、月での居住で必要な農作物への水やロケットの推進燃料としても利用できます。
月は縮んでいる
2019年5月14日、NASAの発表によると、月は縮んでいるとの見解を示しました。
米航空宇宙局(NASA)の無人月探査機「ルナー・リコナイサンス・オービター」がこれまで撮影してきた一万2000点の画像を分析したところ、月の北極近くに位置する「氷の海」と呼ばれる場所に「しわ」が生じているとのこと。
月は地球と違ってプレートの移動が無いため地球のような山脈が形成されることはありませんが、月が誕生してから少しずつ冷えることで地殻変動が起こるといいます。
こうした運動により、まるでぶどうがレーズンになるように月面にシワが形成されるのだといいます。
青いラインで囲まれた部分が「氷の海」でこの中にシワが形成されているといいます。
この一枚だけ見ると「しわ」に見えないことも無いですが、一万2000点の画像を分析したうちの一枚ですから地殻変動による「しわ」なのでしょう。
50年前にアポロ計画により月には地震計が設置され、確かに地震も確認されているとのことですから地殻変動も起きていることが分かります。
また震源地は、月の表面ではなく内部のしかも深部で発生していることも分かっており、内部の収縮により表面が崩れる現象が起こるのだといいます。
その結果こうした「しわ」が形成されているわけで、NASAによれば月は過去数億年で50メートルほど縮んだとの見解を示したのです。
月は空気も無く死の世界といわれていますが、表面の黒っぽい模様や今でも内部の地殻変動が「しわ」となって表面に現れたりと、まだまだ死んでいないのかもしれませんね。