日本で一昔前に問題になった「酸性雨」と呼ばれる現象をご存知ですよね。
なんでも、人間の活動により大気が汚染され雨が酸性になることで森林が枯れたり湖や川の魚が死んだりして生態系が侵されるとされていたような記憶があります。
最近は天気予報でもほとんど聞かなくなり、何となく空気がきれいになったのかと錯覚してしまいますが、夜空の星を観るととてもではありませんが空気がきれいになっているとは思えませんよね。
そこで現在の日本では酸性雨がどのような状況になっているのか、その原因と悪影響について調べてみました。
酸性雨とは
酸性雨とは人間の活動も含めて大気中に拡散された窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)などの酸化物が上空の水蒸気に溶け込み、通常よりも酸性度が強い雨が降ってくることです。
酸性雨は河川や湖、土壌を酸性に変えて農作物や生態系に悪影響を与えるほか、コンクリートを溶かしたり、中に入っている鉄筋を錆びつかせるなどの被害を与えます。
酸性物質が雨に溶け込む仕組みは二通りあり、一つは雨の元になる段階で空気中の酸性物質が雨粒の核となる場合で、もうひとつは雨が地上に降ってくる経路で酸性物質を取り込む場合です。
このメカニズムを考えれば雨の酸性度は、降り始めが最も高く、その後降り続いた雨は酸性度がしだいに弱くなっていくものと考えられます。
酸性雨の指標としてのPH値は5.6以下
物質の酸性やアルカリ性の指標として使われている値に「水素イオン濃度」と呼ばれる指標が使われています。
これがPH(ピーエッチまたはペーハー)で、酸性度が強いと数値が小さくなり、逆にアルカリ性が強いと数値は大きくなります。
ちなみに真水は中性でPH値は7.0となっています。
仮に大気汚染が無くても大気中のCO2を溶け込むためにいくらかは酸性に傾きます。
大気中のCO2が十分に溶け込んだ場合はPH値が5.6になるため、酸性雨はPH値が5.6以下になることが一つの目安にはなります。
しかし、日本の気象庁ではOH5.6以下という基準は設けておらず、酸性雨に対しては数値による定義は無いみたいです。
というのも酸性雨というのはある意味公害問題の一つとして捉えられているので、硫黄酸化物が多い火山周辺で降る雨は酸性度が強いこともあり、酸性雨を判断するうえでは地域ごとに人為的な影響を受けない自然な状態での雨の酸性度を基準にする必要があるからだそうです。
ちなみに日本では2012年全国でモニタリング調査をしたところ全国平均でPH値が5.8だったそうです。
先ほど書いた「酸性雨はPH5.6以下」という指標からすれば、今のところは酸性雨とまでは言えないようです。
しかし今後経済の発展とともに大気汚染が深刻化することも考えられ要警戒といったところでしょう。
特に最近の中国のようにPM2.5をはじめとした大気汚染が深刻化する中、日本への悪影響も懸念されています。
環境省が日本を含む東アジアの13か国で酸性雨のモニタリングに参加
こうした現状に危機感を持ったのか、環境省も酸性雨のモニタリングを日本国内だけでなく、東アジア全体に広げて調査を開始したようで、今後の報告が注目されます。
東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)と銘打って、酸性雨対策としてはけっこう大がかりな調査を行っているようです。
酸性雨は皮膚についても問題ない
そんな酸性雨ですが、私達への健康被害は無いのでしょうか。
まず思いつくのが皮膚に酸性雨が付着した場合です。
一時酸性雨に頭が濡れると禿げてしまうと言った噂がありましたよね。
酸性だけに皮膚に付着するとただれてしまわないかと怖くなりますが、PH5.8の酸性雨ではただれるどころか何の問題も無いとされています。
というのも、元々人間の皮膚は常在菌や皮脂などで弱酸性となっており、PH値にすればおよそ4~5くらいとされています。
つまり日本で降る酸性雨よりも人間の皮膚の方が酸性度が強いのです。
なので、日本の酸性雨で健康被害が出ることなど考える必要は無いといえます。
河川や海はアルカリ性
酸性雨が降り続いている現状で、河川や海はどうなっているのかというと、実はアルカリ性になっているのです。
その理由は岩石を構成している成分がアルカリ性を示すものが多く、それが河川や海に取り込まれるため河川や海の水はアルカリ性になっているとされています。
とはいっても地上で酸性度が強まっていけば河川や海の生態系にも悪影響が出る可能性も否定できませんから、今後の人為的な活動には一定の制限を設けたほうが良いかもしれませんね。
現在ほとんど耳にすることが無くなった酸性雨は、私達が知らないところで活動しているんですね。