日頃地上で暮らしているといろんな匂いがしますが、匂いなんてごく当たり前のことなのでさほど気にも留めないことかもしれません。
海岸に行けば潮の香り。
山に行けば森林の香り。
では宇宙空間はどんな匂いがすると思いますか?
言われてみるとちょっと気になりますよね。
宇宙飛行士の証言により宇宙空間は「ラズベリーやラム酒のような甘い匂い」や、日本人宇宙飛行士の中には「生臭いオゾンのような匂い」と証言しています。
正にバラバラ感のある宇宙の匂いですが、ここに来て的確ともいえる証言が報告されています。
それが「宇宙はステーキを焼いた匂い」
この証言がこれまで科学者が考えてきた物質と一致していたといいます。
まさか宇宙空間の匂い生身で嗅ぐなんてこと出来ませんし、匂い識別装置があっても宇宙空間なんて想定していないでしょうし・・・
いったいどういうことなんでしょうか・・・
宇宙飛行士の船外活動の後、宇宙服に匂いが付着
宇宙空間は真空のために直接匂いを嗅ぐ事は出来ません。
ではどのようにして宇宙の匂いを嗅いだのかというと、宇宙飛行士が船外活動を終えて船内に戻った直後に宇宙服の匂いを嗅ぐと決まって匂いがするのだといいます。
どのような匂いがするかはその人の暮らしてきた環境やイメージがありますから全て同じというわけには行かないでしょうが、最も近いのが「ステーキを焼いた匂い」というのです。
日本人なら馴染み深い「焼肉の匂い」といったところでしょう。
実はこの焼肉の匂いというのは宇宙空間に広く存在しているそうで、宇宙服に付着した匂いも宇宙空間での船外活動によるものと考えられます。
ただ、宇宙空間で匂いを嗅ごうにも匂い物質を吸い込むことが出来ないために宇宙服に付着した物質を間接的に嗅ぐしか方法はありません。
匂いの正体は多環芳香族炭化水素
NASAエイムズ研究センターのルイス・アラマンドラ氏によると、この匂いの正体は「多環芳香族炭化水素」と呼ばれる物質で宇宙空間ではごくありふれた物質なのだそうです。
多環芳香族炭化水素はこんな構造をしています。
こうした構造の多環芳香族炭化水素は、1996年に南極で発見された隕石の中に火星から飛来したとさとして話題になったときに生命の痕跡が見つかったとされたときに話題になりました。
いくつものベンゼン環が結合した有機化合物で、宇宙空間のいたるところで観測され、宇宙に存在している炭素の20%を占めるとも言われています。
彗星や隕石にも存在
さらに多環芳香族炭化水素は、彗星や小惑星にも存在しているともされ、生命体を作り出す基礎分子の有力な候補としても挙がっているといいます。
また、地球上では石油、石炭や、焼肉やステーキのような加熱した食べ物でも存在していることが分っています。
地球に多くの生命体を育むことが出来たのも、彗星や小惑星から運ばれてきた多環芳香族炭化水素が生命の基礎となっているのかもしれません。
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多環芳香族炭化水素は酸素や炭素の量で匂いの質が変わる
私たちが暮らしている太陽系には酸素が少なく炭素が多いために多環芳香族炭化水素の匂いは刺激的になり、逆に酸素の量が多くなると香ばしい匂いがするそうです。
宇宙飛行士が船外活動を終えて船内に戻れば酸素が豊富に存在するために香ばしい匂いがしたのではないでしょうか。
しかも多環芳香族炭化水素の匂いは決して不快なものではなく、非常に心地よい匂いがするそうで、地球上で加熱した肉にも含まれていることから故郷を思い起こすような馴染み深い香りといえるのではないでしょうか。
日本でも「におい識別装置」があるそうですから、一度国際宇宙ステーションに持ち込んで船外活動に同行させて宇宙空間の匂いを測定してもらいたいものです。
人工的に宇宙の匂いを作り、「宇宙の香り」と名づけた缶詰を発売すれば意外とヒットするかもしれませんよ。