火星の環

火星に環が出来つつあることが観測データを分析して判ったことが話題になっています。

これまで環といえば誰もが土星の立派な環をイメージしますよね。

初心者向け天体望遠鏡でも土星の環を観測することが出来るくらいですから、実際に土星の環を観た人にはとても印象的だったでしょう。

こういったことから太陽系の惑星で環があるのは土星だけと思っている人も多いはずです。

ところが、実は木星天王星海王星にも地上からは観測できませんが、探査機の観測により環があることが判明しているんですよ。

木星、土星、天王星、海王星といえばガスで出来ている木星型惑星で、岩石で出来た地球型惑星に対して、比較的大きな惑星です。

こうしたことから私的には質量の大きなガス惑星しか環を持つことは出来ないのかなと思っていたんです。

ところが今回、地球よりも小さな地球型惑星である火星に環が出来つつあるというのですから驚きです。

何故このような分析がなされたのか・・・

今回の報告を元に調べてみました。

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火星の衛星が崩壊して環になりつつある?

火星には2つの小さな衛星「フォボス」と「ダイモス」が周回しています。

下の表をみてもらえば判りますが、地球の衛星である月と比べて非常に小さいです。

この2つの衛星でフォボスが火星に異常に近いところを周回していることが分かりますよね。

これが火星の環を形成しているのはフォボスとされているようなのです。

フォボスは火星の潮汐力により今後二千万年~四千万年後にバラバラに分解されて、その状態が数百万年にわたり持続し、最終的には土星のような密度の環が形成されるのではないかと考えられています。

まずは火星の衛星と、他の惑星の衛星を比較してみます。

火星の衛星 直径(km) 軌道長半径(km)
火星 6,779
フォボス 27.0×21.4×19.2 9,376
ダイモス 15.0×12.0×11.0 23,458
地球の衛星 直径(km) 軌道長半径(km)
地球 12,756.274
3,475.8 384,400
土星の衛星 直径(km) 軌道長半径(km)
土星 120,536
ミマス 414.8×394.4×381.4 185,404
エンケラドゥス 513.2×502.8×496.6 235,020
テティス 1080.8×1062.2×1055 294,619

地球と月、土星とその衛星の大きさと距離からすれば、火星の2つの衛星が如何に小さくて火星表面に近いところを周回しているのが分かると思います。

そのためフォボスは火星の重力による潮汐力で崩壊しかけているものと考えられます。

 

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土星の環も衛星が崩壊して出来た?

ここで土星の環についてみていきましょう。

土星の環は幅が27万キロもあって、直径では土星の2倍以上もある巨大な物です。

これだけ広範囲に広がっているにも関わらず、環の厚みは物凄く薄く僅か10m~20m、厚いところで約1kmと考えられています。

環の殆どが直径1cm~10mほどの氷の粒で出来ていることが分かっています。

この土星の環がどうやって出来たかは推測の域を出ませんが、一説によれば衛星が土星に近づきすぎて潮汐力により崩壊して形成されたという考え方があります。

他には衛星に彗星が衝突して砕け散った破片で環が出来たとか、宇宙空間の物質が衛星になりきれずに土星の周りを公転して出来たとかありますが、今回の火星に環が衛星の崩壊により形成されつつあるとの報告からすれば、やはり潮汐力で衛星が破壊されたという説が有力でしょう。

重力も小さくて主天体にかなり近いことから潮汐力で破壊され易く、これが環の形成に貢献しているんでしょうね。

ただし、2009年土星に「フェーベ環」と呼ばれる環が発見され、その大きさがとんでもなく大きいことが分かっています。

その「フェーベ環」の大きさというのが半径4,000,000km~13,000,000kmとされているようで、土星の衛星で有名な「タイタン」よりも外側に位置していることになります。

フェーベ環は土星の主要な衛星である「フェーベ」からガスやチリが供給されて形成されていると考えられているため「フェーベ環」と名付けられたのだそうです。

こうした事実から環が主天体から離れ過ぎると引力により衛星が形成されるという考え方が完全にくつがえされたことになります。

 

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フォボスから気体が噴き出しているのを過去に確認

1988年に旧ソ連がフォボスに向けて探査機を打ち上げたフォボス2号は火星の周回軌道に入ったものの、その後通信が途絶えて失敗しましたが、その際にフォボスから安定的に気体が噴き出していることを発見しています。

またNASAのこれまでの火星探査によるフォボスの観測によれば、表面に何本も走る長い溝が確認されており、火星の潮汐力によりフォボスがゆっくりと引き裂かれている兆候であることを発表しています。

その画像がコレ

フォボス

こうした事実や見解からフォボスから少しずつ粒子が放出されて環を形成し始めているのかもしれませんね。

ちなみにフォボスは火星の重力により100年に2mずつ高度が落ちているそうで、3000~5000万年の間には完全にバラバラになると考えている科学者もいます。

それまで火星の環の形成に貢献してくれるのかもしれませんね。

フォボスと同じような表面の海王星の衛星「トリトン」も少しずつ高度を下げているようで、フォボスのようにいずれは潮汐力により引き裂かれることになるかもしれないと言われています。

海王星にはすでに環が形成されていることが確認されていることを考えれば今後火星に環が形成されても何ら不思議ではないですよね。

数千万年後の人類は火星にかかる立派な環を目にしているのかもしれませんね。