第一宇宙速度

宇宙開発の話になるとたまに耳にするのが「宇宙速度」です。

読んで字のごとく宇宙における速度ですが、宇宙速度とは簡単に言えば人工衛星を軌道にのせるために必要なスピードのことです。

宇宙速度は、

第一宇宙速度
第二宇宙速度
第三宇宙速度

に分けられ、それぞれ目的別で速度が違います。

今回は最も多く使われる第一宇宙速度について注目していきます。

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第一宇宙速度は地上に落下しない速度

第一宇宙速度とは地面と水平に発射した物質が地面に落下することなくその高さに留まることが出来る最低速度のことです。

現在多くの人工衛星が地球の周りを公転していますが、その高度は目的によりさまざまで、高度によって速度が違います。

というのも地球の重力は高度が高いほど弱くなるため、遅い速度でも軌道に留まっていることが出来るからです。

逆に高度が低いとそれだけ重力が大きくなるので速度を速くしないと軌道に留まることが出来なくなります。

人工衛星の高度別の速度と周期は次の通り

高度(km) 速度(km/秒) 周期
0 7.906 1時間24分28秒
200 7.788 1時間28分29秒
500 7.612 1時間34分37秒
1,000 7.35 1時間45分08秒
10,000 4.934 5時間47分40秒
35,786 3.075 23時間56分04秒
40,000 2.932 27時間36分39秒

 

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これを見ると高度が低いと速度が早くなるのが分かりますね。

ちなみに国際宇宙ステーションは高度400kmのところを秒速7.7kmで飛行しているんですよ。

この速度は何とライフルの弾よりも速いのです。

あわせて読みたい:国際宇宙ステーションのスピードはライフルの弾よりも速い!

また、ひまわり8号のような静止衛星は高度約36,000kmの軌道を秒速3.1kmで飛行しています。

静止衛星なので地球の自転と同じ周期が24時間にになっています。

あわせて読みたい:人工衛星の速度は高度で決まるって知っていますか?

参考のために

第二宇宙速度
第三宇宙速度

についても見ていきましょう。

第二宇宙速度は地球の重力を振り切る速度

第二宇宙速度とは地球の重力を振り切って太陽を周回する軌道に乗せるために必要な速度で秒速 11.2 kmになります。

たとえば、人工衛星を打ち上げる時に軌道に乗せるためには秒速7.9km(第一宇宙速度)以上の速度が必要ですが、この速度を増加させていくとどんどん長い楕円軌道になり、秒速11.2kmを超えると地球の重力を振り切って再び戻ってこなくなります。

これが第二宇宙速度です。

 

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地球の重力圏から他の惑星へ向うまでの重力圏

惑星探査機は地球を脱出して目的の惑星に向かい軌道に乗りますが、その際に軌道を計算しなければなりません。

厳密にいえば地球や太陽、月、火星木星などの惑星などの影響を受けるので全ての重力を式に組み込んで計算しなければならないと考えるでしょう。

しかしまだ地球に近い時には地球の重力の方が断然大きいので、地球以外の重力は考えなくてもいいと軌道の計算は出来るといいます。

ちなみに地球の重力が影響する距離は925,000kmです。

地球を離れて地球の重力の影響が小さくなってくると、今度は太陽の重力だけを考えて計算します。

そして目的の惑星に近付いたらその惑星だけの重力だけを考えて計算するのだそうです。

これまで目的の惑星まで到達するのにいくつかの天体の重力を計算しなければならず、さぞ複雑な計算になるのだろうと思いきや、こうしたことを知るにつけ意外と簡単なのかもしれませんね。

ちょっと前に話題になった「はやぶさ2」ですが、こうした計算方法で第二宇宙速度により地球の重力を振り切って小惑星の「リュウグウ」に向かって飛行しているんですね。

もちろん水星金星など、惑星探査機は全て第二宇宙速度以上で飛行しています。

動画で分かりやすく解説:BBC 神秘の大宇宙 DVD全9巻

第三宇宙速度は太陽の重力を振り切る速度

第三宇宙速度とは、太陽の重力を振り切って太陽系外に飛び出せるために必要な速度で秒速 16.7 kmになります。

最近冥王星の鮮明な画像を地球に送って多くの科学者を驚かせた「ニュー・ホライズンズ」は今後太陽系外のカイパーベルトの探査を行う予定ですが、これもスイングバイを利用して秒速17kmと第三宇宙速度に到達しています。

ちなみにスイングバイとは、天体の引力と公転運動を使用することで、燃料を必要とすることなく加速させる手法で、最近の惑星探査機のほとんどがスイングバイを利用して加速しています。

詳しくはこちら:スイングバイで加速出来る理由